第18話 診断と決意と
僕は目の前に置かれた測定器に恐る恐る手を触れた。
「そう、あとはこの水晶が自動的に魔力を吸い取って測定してくれるのよ」
そうユリアナさんが言った。
すると、自分の両手に少し違和感を感じたかと思えば水晶がわずかに光り出した。
どうやら魔力自体は問題なくあるようだ。
物語の主人公なら、ここで割れたり強烈な光を発するのが定番だったりするのだが・・・。
「やっぱり、元のカイちゃんと同じパターンが現れたわね。特に火と光に適性が強いと思うわ。あと、どことなく前のカイちゃんに測定した時よりも全体的に輝きが底上げされているような気がします。
それと・・・何かしら、特殊なパターンが浮かんでいる。こちらは初めて見ますね・・・」
うーんと、ユリアナさんはあごに手をやり難しそうな顔で考え始めた。
特殊なという響きにジーンとくるものがあったが、元々の肉体であるカイくんの身体はとても優秀だったようで、得意属性が火とか光ということでまさに主人公といったところか。
小難しい顔を続けながらも、ユリアナさんは紙にペンを走らせる。測定の結果はまとめた上で改めて僕に報告をしてくれるそうだ。
ひとまずは測定器の前で同じ体勢を続ける。
「はい、もう大丈夫です。」
時間にして5分から10分を要したが、無事に完了したようだ。
僕はというと、魔法の使用に取り掛かりたい気持ちが前に出てきた頃合いだ。
「どうでしたか?」
逸る気持ちを抑え切れずに本題に入る。
「ええ、結果としては前のカイちゃんの測定を大きく上回る魔力量と扱える属性の数ですね。それと特殊魔法が確認できました。
基礎魔法で最も得手とするのが火と光ですね。
他の基礎魔法も一通りは発現可能かと思います。
次に特殊魔法としては創造といったものでしょうか。眠りにつく前には無かった属性ですね。
応用的な活用がメインになりますので、多くの基礎属性を扱うことが出来るカイちゃんの場合は、まさに適性が一致しているのだと思います。
最後に私なりの診断です。
扱える属性の数が多く、器用貧乏となりかねないデメリットがあります。
しかしながらそれをメリットに変えることができるほどの圧倒的な保有魔力量があり、まさに将来有望といえるでしょう。
加えて創造属性を有していることから、魔法の研鑽を怠らなければ相当の力を得ることが出来るかもしれません。
ひとまずこれからは特殊魔法以外の属性魔法は、私とメアリーで訓練いたしましょうか」
悪くない・・・。
思わず笑みがこぼれてしまいそうになる。
正直、勇者にでもなったような気分だ。
以前のカイ君に感謝しよう。薔薇色の人生に向かって、研鑽を重ねることを誓う。
それからというもの、ユリアナさんとメアリーさんとの訓練の日々が始まったのであった。
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