第13話 読書と興奮と

食事を取った後、その日は今過ごしている屋敷の案内と、書庫にあった歴史書や魔法に関する書籍を幾つか借り、ゆっくりと過ごすことになった。

今は未だ精神・体調的に本調子ではないだろうということで、明日から本格的にこれからの生活をどのようにするかを検討していくことにしたんだ。


生活のサイクルとしては今後8時に朝食、12時に昼食、6時に夕食といった感じで、外に出歩かないならかなりの時間を持て余してしまうかもしれない。

当然、娯楽なんて街に出掛けない限りないと思うし、読書に勤しむことにする。

趣味と実益を兼ねてというやつだ。


屋敷はメアリーさんが案内をしてくれた。

別荘にあたると聞いていたが、日本では豪邸と呼ばれそうな程広い。

前を歩くメアリーさんの、小ぶりで魅力的なお尻を眺めながらそんなことを思う。


あ、そうそう、自分の姿を鏡で見たよ。

客観的に見てとても整った容姿をしていた。ユリアナさんに似たのだろう、少し幼く見える顔立ちと、長めの美しい黒髪をしている。

カイ君は18歳と聞いていたが、それよりも幼く見えるのは、随分と眠っていたからか・・・?

メアリーさんに聞くと、倒れた時から容姿の変化はほとんどないようで、不思議なことだが外見的な要素は成長が止まっているみたいだ。

自分の容姿についてはまだテレビやスマートフォンに映る人を見るような感覚だが、いつか慣れるだろうと、開き直ることにする。


まあ、そんなことよりも魔法かな。

幾つか書庫から選んだ本をまとめて机に置く。メアリーさんには他の業務もあるので、ここでお別れだ。

後程お茶をお持ちします。と言う彼女を見送り、僕は一冊の本を手に取る。

『基礎魔法学』と表紙に書いてあるハードカバーの本だ。

古めかしく、重厚感がある。

ページをひとつ捲る。


―—執筆にあたり様々な助言をいただいた全ての人々にこの場を借りて感謝を申し上げる。

本書は、日々の生活の一助とすべく体系化された魔法理論をまとめたものである。

願わくば、これから魔法を学ばんとする多くの未来ある若人たちの手に取られることを祈る・・・

 


そんな書き出しの本だった。

さっきから胸の高鳴りが押さえられない。

ページを順に捲り、一通りの知識を頭に入れた。

できればユリアナさんかメアリーさんに魔法の使い方を学ぶのが望ましいなと思い、逸る気持ちを抑える。

暴発することだってあるだろうし、効率的に習得したいものだ。


その書籍には、生活を便利にする基本的なものから、対モンスターを想定した基礎的な攻撃魔法、防御魔法など多くの種類の記載があった。

魔法名、効果や範囲などまずは知識として頭のなかに叩き込んでいく。


夕食も取り終え、また本に没頭する。

そうして、あっという間に夜が更けていく。


前の世界で物語の空想として書かれていたような魔法が今、実際に扱うことが出来る可能性にワクワクが止まらない。


それだけでこの世界も案外悪くないなと思い始めてきた。

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