第6話 温かい雑炊と覚悟と

次に部屋のドアが開いたのは、時間にして十数分後だった。

相変わらず脳内は混乱を極めた状況だが、落ち着いて話を聞くことが大事だと思う。


いい匂いと共に、ご機嫌そうな母と言う女性とメイドさんが揃って姿を見せる。

つい腹の虫が鳴く。

気がつかなかったが、いつの間にかお腹が減っていたようだ。


「さっ、遠慮なく食べてね」

語尾に音符でも付きそうな程にご機嫌な口調で母?が語り掛ける。

食欲には抗うことが出来ず、黙々と料理を食べ始める。

シンプルな具材だが出汁がしっかりと利いていて、とじた玉子はフワフワで口あたりも良い。

どこか懐かしいような優しい味付けの雑炊は、この身体にはとても嬉しい。

一気に出された料理を平らげてしまった。


「ごちそうさまでした」

食べ終わるのに時間はあまりかからなかった。


「お粗末様。おかわりもあるけどどうかしら?」

終始微笑みながら僕を見ていた女性は言った。

僕はまだ僅かにお腹が空いていたが、それよりも今は気になっている状況を知りたいと思った。


「いえ、ひとまずこのくらいにしておきます」


そう言うと女性は少し寂しげな顔をしたが、すぐに微笑む。


「そう・・・じゃあメアリー、こちらを下げてくれるかしら」


控えるメイドさんはメアリーと言うのか。

かしこまりました、と彼女は言ってすぐに僕の手元にある食器等を片付け始めた。

近くで見るメイドさんの横顔は本当に綺麗だった。

メイドコスの趣味はないのだが、あまりの美しさに見入ってしまう。


「あ、あの・・・何か?」


しまった、つい見過ぎてしまったようだ。


気にしないでとだけ伝え、母だと言う女性に向き合う。


女性の方もこちらの覚悟を感じたのか、微笑みは浮かべたまま、真剣味を帯びた目でこちらを見つめた。


「お聞きしたいことがあります」


「そうね。当然、たくさん知りたいことがあると思うわ。んー、一体何から話をしようかしら」


まずは・・・

少し遠い目をして女性は、衝撃的な内容を僕に言った。




「あなたは恐らく、この世界の人ではないわ」

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