8, エピローグ
ーーー3月のこの駅では、たくさんの別れと出会いが行きかっている。
そんな風景を俯瞰して見ていると、さっきまで泣きじゃくっていた僕もその中の1人だったことに気付かされる。
だけど、僕の用事はここにはもう無い。
「帰るか」
僕はポケットに手をつっこんで、駅を後にした。
ほのかに暖かさを感じられる3月の晴れ空、その暖かさはもうすぐ春がやってくることを教えてくれているようだ。
僕は空を見上げて自分を照らす太陽の眩い光に目を細めた。
そんな太陽を見ていると、彼女のことを思い出してしまう。
だけど、太陽の周りに現れた幻想的な暈(かさ)は、瞬く間に消えていく。
その美しさに見惚れていた僕の心を見透かすように。
「さて、僕も負けないように頑張らないとな」
見慣れた風景の中、僕は自転車を走らせていく。
そして、そんな僕を太陽はいつでも照らしている。
君馴染タンジェントアーク 伊藤キース @huwritten
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