第3章
プロローグ Ⅱ
連載再開です。
読者の皆様の応援のおかげで、10月3日アース・スター ルナ様より書籍発売が決定しました!
詳しくは近況ノートをご覧下さい(書影などもついてます)
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私とシャヒルの夢――――。
魔導具と料理がコラボした魔導料理店は、いよいよ開店日を迎えようとしていた。
メニューは揃った。設備も充実しているし、この後新作魔導具も登場する予定だ。
カウンター席が5席、4人掛けのテーブルが3卓とまだ小さいお店だけど、たくさんのお客さんに、シャヒルが私の魔導具を使って作ったおいしい料理を堪能してほしいと思っている。
準備はとても順調だった。
もしかしたら、私が元いたネブリミア王国王宮――詳しくいえば、その魔導工房から何か嫌がらせを受けるのではないかと思ったけど、ここはテラスヴァニル王国だ。しかも、その王宮が聳える王都である。さすがに嫌がらせはできなかったのだろう。
しかし、開店日を明日に控えて、今大問題が起こっていた。
「ニールヴァータというのはどうだろう。テラスヴァニル王国の伝承に出てくる『天国の扉』のことを意味するんだ。俺はその伝承が好きでね。主人公が……」
「その伝承のことはあとで聞かせて、シャヒル。時間がないから。でも、『天国の扉』か。有り難くも聞こえるけど、なんか物騒な響きよね」
「はい。本当にお客様が『天国』へ行かれては問題があるかと」
ステルシアさんが割と物騒なことをさらりと言う。
「君も反対なのかい、ステルシア? じゃあ、カトレアの意見は?」
「コケーンってどうかしら。私の好きな童話で、山がチーズでできてて……」
『却下』
「ええ! おいしそうじゃない、チーズの山」
「チーズの山はともかく、雌鳥の鳴き声みたいじゃないか」
「
「厳しい! じゃ……じゃあ、ステルシアさんはどうなんですか?」
「これは私の問題ではなく、お2人の問題と心得ますが」
「逃げましたね」
「逃げたな、ステルシア」
私とシャヒルが同時に半目で睨む。
いつ見てもメイド服が似合うステルシアさんは、目を伏せて黙秘を貫いた。
「ああ。もう明日開店だっていうのに、なんで今の今まで気づかなかったのかしら」
私は折角ステルシアさんに整えてもらった髪を振り乱しながら、頭を抱える。
今、私たちを悩ませる問題は1つだ。
お店の名前である。
明日が開店日だというのに、私は魔導具、シャヒルは料理のことばかり考えていて、肝心の要の店名のことをすっかり忘れていたのだ。
ステルシアさんに指摘されなければ、おそらく名もなき料理店として開店していたことだろう。
シャヒルの伝手を使い、慌てて看板屋さんを呼んだが、未だに店名が決まっていない。
魔導具名や、料理名とかはすんなり決められたのに、いざ店の名前となるとまったく出てこないなんて。私とシャヒルがつくづく、魔導具馬鹿の、料理馬鹿だということに気づかされてしまう。
店名について熱い議論を交わす中で、待ちくたびれた看板屋の店主はやれやれと首を振った後、私たちを指差した。
「じゃあ、こういうのはどうですか? シャヒル王子と、えっと……カトレアさんでしたっけ? お2人のお名前をそれぞれ頂戴するのです」
「私たちの?」
「シャーレアってのはどうですかね? なかなか洒落た名前だと思いますけど」
私とシャヒルは思わず固まった。
ステルシアさんも珍しく目を丸めている。
それぞれ提案した看板屋の店主を見つめた。
「いや、その…………。あれですよ。思いつきで言っただけで。ど、どうぞ。あっしらはいつまでも待ちますから。どうぞ納得がいくまで考えてください。大事な店の名前ですし」
3人からの視線の圧力に、店主は慌てて手を振る。
だけど――――。
「それだわ」
「ああ。それしかない」
「悪くないかと」
全然いい。
この店には様々なコンセプトが詰まってる。
でも、大前提なのは私とシャヒルのお店だということだ。
魔導料理店をするために、私たちは困難に立ち向かってきた。
だからこそ、2人の名前を冠した名前こそふさわしい。
「決まりだ」
「ええ……」
『魔導料理店シャーレア』で決まりだ。
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お待たせしました。第二部始まります。
それに伴い、告知です。
この度、10月3日にアース・スター ルナ様より書籍が発売されることとなりました。
Web版から大幅に改稿し、さらに料理や魔導具などが増えております。
クライマックスのシーンなども見直し、とても読み応えの良い作品になっておりますので、
是非お買い上げください。
イラストは『野生のJK柏野由紀子は、異世界で酒場を開く』シリーズなどで活躍されている
すざく先生にお願いしました。とにかくご飯がおいしそうなので、是非お買い上げください。
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