第2話

 よ~し、今日のおかずは何にしようかな。昨日は鮭だったから~。


 そうだ、近所のレイビスリンカさんから卵をたくさん貰ったんだ。

 私たちが住む村には、養鶏場があるからたまに貰ったりしている。卵は色んな料理にも使えるから、本当に助かっている。

 ご近所付き合いって、大切だよね。といっても、この村は小さいから、必然的に話すことが多くなるけど。


 私はいつの間にか会得した、秘儀・片手卵2個割りで、卵を殻から取り出す。その名の通り、片手で2つ卵を持って、そのまま握りしめて割る方法だ。これを同時にもう片方でもやることで、一気に4つ割れる。


 私は結構握力強いから、かなり加減しないと殻が細かく砕けてフライパンに入ってしまう。

 でも、さすがは私。完璧に4つの黄身がフライパンに落とされた。

 面倒くさいからこのまま目玉焼きでいいや。


 完璧と言いながら、私は結構適当に家事をやっている。最初はこだわっていたけど、それじゃあ私の体が1つじゃ足りない。

 8人もいるので、質より量と高率が大事なんだよね。


 そして朝食が仕上がった頃、リビングの方から目覚まし時計のけたましい音が鳴り響く。壁を1枚挟んでいるけど、こっちまで聞こえてくる。


 すると、兄弟たちの眠そうな声や、どたばたと動く足音が聞こえてくる。

 子供たちはこれから村の学校に行くので、結構朝が早い。皆、だいたい眠たそうな顔で起きてくる。

 だから、目覚ましの音がどんどん大きくなっていった。


 下の子たちはまだ起き上がってないから、私が起こしに行かないといけない。


 台所のドアを思いっきり開けて、リビングに向かう。


「はーい、皆おはよーう。ちゃっちゃと起きて、朝ごはんにするよ~」


 料理でフライパンを使ってなかったら、それにお玉でもぶつけて音でも鳴らしたい気分だ。私の予想通り、年少組はまだ布団の中にいる。

 目覚ましはもう誰かが止めたようで、今は鳴っていない。

 奥の寝室では、一緒に起きた母親と年長組がせっせと布団をしまっている。


「ねぇちゃん、おはよう!」


 朝から元気よく挨拶をしてきたのは、長男のギオだ。私ほどじゃないけど、結構しっかりもの。でも、まだ子供は子供だ。寝ぐせがひどい。


「ギオ、みんなを起こすの手伝って」


「りょうかい。ほら、おまえら、起きろよ!」


 ギオはリビングにくると、かなり乱暴に兄弟たちを起こす。具多的には、掛け布団を無理やり引きはがすのだ。

 これで次女と、3女は目を覚ます。今は気温が低いから、かなり寒そうにしている。重たい瞼をこすりながら、不機嫌そうに起床し始める。


 もう1人の年少組、四男のフーが問題だ。

 掛け布団にギュッとしがみついて、長男ギオの剥がし行為を妨げている。


「こんにゃろう。いい加減にしろって」


 ギオは思いっきり布団を引っ張って、フーから引きはがした。もっと4男の腕力が強かったら、そのまま掛け布団にくっついてきそうな勢いだった。


 ようやくこれで、皆起き始めた。


 朝ごはんを食べるために、この部屋を食卓にしなければいけない。だから、いつまでも寝ていられては困るのだ。

 台所にも食べるスペースはあるけど、8人は無理。


「ゼマ、おはよう」


 細い目をした母さんが、私に微笑みかける。肌はひどく白くて、少し声のボリュームも低い。けど、どこか温かさを感じる。


「おはよう。目玉焼き作ったから、運ぶの手伝ってくれる?」


 作るのもだけど、意外と8人分の料理を運ぶのが大変だったりする。兄弟の多くはシンクに手が届かなかったり、届いたとしても落とす危険がある。


 だから、私とか母さんが運ぶ係だ。

 今の母さんは体力は落ちているけれど、これぐらいなら家事を手伝える。お医者さんが言うには、逆に運動をしなさすぎるのもよくないらしい。

 本当はもっと家事を手伝って貰っても大丈夫なのかもしれないけれど、今は私のアシストに留まらせている。

 私は兄弟姉妹のことも心配だけど、母さんのことも心配なんだ。


 奥から長テーブルをリビングに出すと、その上に作った朝食を置いていく。

 簡単な料理だけど、こんだけ量が並ぶと、結構迫力がある。


 米も上手く炊けたし、今日も問題ない。


 家族全員を座らせて、食卓を囲む。


「それじゃあ、いただきます!」


 私の合図とともに、皆も一斉に手を合わせる。


『いただきます』


 子供たちの元気だったりけだるけな声が合わさった言葉だった。4男のフーは、食べながら寝そうな勢いだった。


 これで朝ご飯を食べ終わったら、私の朝の仕事は終わり。なわけはない。

 これから、洗濯、洗い物、軽く掃除もしなきゃかな。


 子供たちの着替えも手伝ったりするし、やることはいっぱいある。


 これから体力を消費するのは確実なので、力をつけるためにも私は朝ごはんを胃の中へと流し込んでいった。

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