001:夢はここで終わり(Dream Ended This Way)

最終更新:07/20


錆と蔦に覆われたフェンスはすでに朽ち果てており、蹴りつけると簡単に倒れた。やけ

に丈の高い雑草の群れをなぎ倒しながら、私はフェンスで囲われた裏庭へ入った。


裏庭は木々が繁り、街の光が届かないほど暗くなっていた。やけに現実感がなく、夢のようだった。――いま私が夢をみているとしたら、夢の終わりは簡単に来るはずだ。抵抗はない。私の意思が介在することなどなく、澱みなく、流れるように終わる。この意識も突然終わりが訪れるのだろうか――。暗闇のなか、繁茂に忙しい雑草の群れと戯れながら、そんな危険な思考に身を任せていた。


「ところで」と話題を変えるかのように、目の前の景色が突然ひらけた。そこは西洋式の墓地であり、荘厳ではあるが忘れ去られたふうに、墓石が整然と並べられていた。私はふと目についた墓の前で立ち止まった。


墓石――墓底に眠る聖者を祝うかのように花々が咲き乱れている――には、次のように刻まれていた。


「鉄の嫉妬――血の味

壁で燃えるしるしを汝の指で示せ

純粋無垢ほど汚濁に満ちたものはない

汝、人間のように

絶望に堕ちよ」


私はお母さんの子ども

お母さんはもういない

私は罪を背負っている

寂しくいることで

なぜって

私が世界に探しに行くといつも

私を殺したものを知るから

私はすべてが嫌い

人間が嫌い


感じられる現実

月と陽のひかり

あなたが愛しているとしたら

私が傷つくのがわかる


見下ろすとはどういうことか

知るために山に登った

どうしてお腹がすくのだろう?

私は何に餓えている?


私を信じるように、なんて

あなたに言うつもりはない

自由に落ちていく


窓の外では

すぐに私は起きるだろう

美しいと感じた

暴力的に美しいと


そこで彼は言った。

「夢はここで終わり。」

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月の光が満ちるとき、黄金の時間 @ans_combe

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