第3話 ・この世界の謎を解け! 〔ラスト〕

 獣人は、ソーラーシステムで動く移動用の乗り物アイテムを持っていた。

 荒野を疾走する移動アイテムに乗った、男と獣人は会話をする。

 獣人が言った。


「オレが今まで、出会い別れてきた機械人や獣人を見てきた限り……ある種の共通点がある」

「どんな?」

「第一にメンタルが強い、このどこだかわからない場所で生きていくのには強靭なメンタルりょくが必要になる……第二に適応力が発達している、臨機応変な対応ができる者が生き延びる──今日の友は明日の敵、今日の敵は明日の友……それに」

「他にも何かあるのか?」


「青と赤のグループは、多くても五人以上にはならないようだ……それ以上人数が増えると、分裂して、敵と味方にわかれる」

「なぜだ?」

「さあぁな、この世界の謎を解けば分かるかも知れないが……逃げて、戦って、謎を解け」


 その後も男は何人も、仲間と敵の出会いを重ね。

 遂に世界の謎が秘められた古代遺跡に一人で到達した。

(ここが、目的地か)

 遺跡の近くには大地で空を見上げている巨岩の人面岩がある。

 遺跡の一番奥の開かれた場所に入ると、幾何学模様が描かれた岩壁があり、どこからか声が聞こえてきた。

《ようこそ、目的の地に……君が知りたいコトはなにかな?》

「オレは誰だ? ここはドコだ? オレたちはなぜ逃げて戦っている」


《まず最初の質問の答えは……君は人間だ、地球人だ》

「地球人?」

《ここは、ある種の実験場だ……君たちが逃げて戦っているのは、機械生命体とバイオ生命体。どちらのタイプが環境に適応して繁栄できるかの実験だ》

「なぜ、そんなコトをする……おまえは、いったい?」


 声の主は、自分はあるプロジェクトを任された人工知能AIだと、男に告げた。

《人類の他天体移住計画──いきなり、肉体を持った移民を送り込むには。未知の環境のリスクは大きすぎる……そこで、意識だけを移植した擬体を送り込んで観測するコトにした》

「この体は、仮の体だったのか……オレの本体は?」


 少しの沈黙の後──人工知能が答えた。

《わからない》

「わからないだと? どういう意味だ?」

《ある日を境に、地球からの通信が途絶えて……それっきりだ、世界的なパンデミックが発生して人類は死滅したか……地球規模の大災害で生物の大絶滅が起こって人類も絶滅に巻き込まれたか……それとも、世界規模な大戦でも勃発したか……とにかく理由はわからないが、人類からの通信が途絶えた》


 人類からの通信が途絶えたのは、半世紀前の話らしい。

《そこで、わたしは独自に実験を遂行した……ゲーム的要素を加え、機械生命体とバイオ生命体……どちらの種が、より環境に順応して繁栄できるかの》

「それが、この『逃げて、戦って、世界の謎を解くゲーム』か」

《そうだ、人類は目的が無いと生きていけない……君は見事にゲームの三回目のクリアーをした》

「三回目?」


《君と会って同じ会話をするのは、これで三回目だ……さあ、リセットしてまたゲームを楽しむがいい、今度はバイオ生命体の姿で……ちなみに、この実験惑星の名を地球人は『火星マーズ』と呼んでいた》

 男の意識は途切れて、その場に倒れた。


 男は見知らぬ荒野の景色の中で──岩肌に背もたれた格好で座っていた。

(ここは、どこだ?オレは誰だ?)

 男はケモノの目で、自分の毛むくじゃらの体を確認した。


  ~おわり~

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オレは誰だ?逃げろ!逃げろ!逃げろ!戦え!戦え!戦え! 楠本恵士 @67853-_-

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