ダンジョンへと潜る商人たちの軌跡
貴宮アージェ
キャラバンメモリーズ~ダンジョンへと潜る商人たちの軌跡~
【ダンジョン】
迷宮や洞窟、古代遺跡など人々が普段は足を踏み入れない場所。
中にはモンスターの巣窟や古代文明の警備システムなどによって
侵入者を悉く返り討ちもしくは迎え撃っているなど
ダンジョンの構成によって様々といったところだ。
中にはダンジョンを製作する者たちによってダンジョンの構図などが
大幅に何度も作り変えられている摩訶不思議なダンジョンも存在する。
またダンジョンには未踏破などもあるが最深部などには数多くの宝物や
古代の未発掘品など所謂“レア物”が存在する為にか多くの冒険者や
盗掘者など様々な思いと共にダンジョンに挑み、ある者は『制覇』し
ある者は『敗北』するなど多くのダンジョン攻略における多くの伝承を
生み出してきた。
そんなダンジョンにダンジョン攻略としてではなく、別の思惑の為に
ダンジョンへと潜る変わり種も少なからずいた。
その人間は・・・・・【商人】である。
この話はそんなダンジョン攻略に精を出す冒険者たちの手助け?を
するべくダンジョンへと潜る商人たちの活躍をお届けするつもりだ
キャラバンメモリーズ―ダンジョンへと潜る商人たちの軌跡―
「よし、用意はこれでいいな」
1人の青年が目の前のアイテムのチェックを確認し終えた。
彼は商人だ。
若手ではあるが商人ギルドの面々から将来有望とされている程の逸材でもある。
彼はダンジョンに持ち込むアイテムの商品物を確認終了した所だ。
そこへ壮年の先輩商人とおぼしき人物が青年商人に声を掛ける。
「お、準備は完了したようだな」
「先輩。はい、これからダンジョンへ向かおうと思っていた所です」
「そうかそうか。おまえさんも遂にダンジョン商売デビューか」
感慨深いといった風にうんうんと頷く先輩。
ふと先輩は後輩である青年の持ち物にふと焦点を合わせた。
「おいおい、一つ忘れ物があるぞ」
「え、なんです?」
「魔物除けだよ、魔物除けの護符(アミュレット)!!」
先輩商人が自分の首に下げているお守りを手に持ち見せる様に掲げる。
特殊な製法でできた護符で魔物を始めとしたダンジョン内のトラップから
その身を護るという優れものだ。
指摘に気づいた青年商人はすぐさま辺りを見回し、棚の上に置いてあった自分の
護符に気づき、手を取り首にかける。
「すみません」
「気を付けろよ。商品も大事だが自分(テメェ)の身体も大事な商売道具なんだからな」
反省の色を見せる後輩に先輩の商人は優しく答える。
ダンジョンは場所や内容によってその危険性もまた異なる。
身体一つで様々な道具をダンジョン内の冒険者たちに売り買いする商人たちも
また様々な危険に晒されてケガをする者や生命を落とす者もいる。
だからこそ細かなことでも注意を払わない、九死に一生を得る、という事態を可能な限りに避けるのもまた大事な仕事なのだ。
「気を抜くと本当に危ないからな。本当に気を付けろよ?」
「はい、より気を付けてダンジョンに潜ってきます」
そう言うと今度こそ青年は店を出てダンジョンに向かい歩き出した。
それを見送る先輩商人。
そこへ警備風な武装を施したいかつい人物がやってきた。
「やあこんにちは。おっと彼が今回の担当かい?」
「おーごくろうさん。ああ、これから潜る所さ」
気さくにそう答える先輩に警備団の男性はそうかそうかと頷く。
「彼は確か初めてダンジョン商売デビューだったか。ならこちらもいつも以上に目を光らせておかないとな」
「いつも済まないねぇ。アンタらの力添えもあるからこそ俺達は商売できるってモンさ」
「そう言ってくださるとこちらも気が楽になりますなぁ・・・それでも冒険者の中にも不届き者がいますがな」
ダンジョンの危険さは何もモンスターやダンジョンの構造及びトラップだけではない。
冒険者の中にも商人の商売品をろくでもない手段を持って略奪しようという不心得な不届き者もいるのも事実。
資金上の問題などもあるのだろうが様々な手口を用いて展示している商品を持ち去ろうと小賢しい行為が後を絶たない。
そんな時は先輩商人の隣にいる警備団の出番だがそれでもやらかす人間が増加傾向なのも頭を悩ましていた。
「一攫千金を狙おうとするヤツに限ってそんなことするヤツが多いからな」
「ダンジョン踏破だけならまだいいんだがねぇ・・・」
先輩も警備団員も略奪行為を行った不埒な冒険者に幾度も襲撃された過去があり、その都度撃退したが今回の若手の後輩商人はその経験がなく、伝え聞いただけであり、不安は少なくもあった。
しかし同時に期待もあるのもまた事実である。
「これがまた一つの成長になることを願おうじゃねぇか」
ダンジョンの入り口へと立った青年商人は緊張を伴った真剣な表情を浮かべていた。
これから自分はこのダンジョンへと潜り、ダンジョン内で冒険する人々へアイテムを商売することになる。
危険はるし、不安もある。不安な気持ちや感情は那由他の如くあるが同時にワクワクしている自分を感じていたりもしている。
自分も先達の商人たちと同じ道を歩めることへの喜びを胸に抱いているのも確かなのだ。
彼は気合を入れる様に両頬を両手で勢いよく叩く。
痛みが刺激となって目を覚まさせる。
ここから彼の物語の始まりだ。
「さあ、いくぞ」
彼はダンジョンへと一歩、歩を進めた。
彼の戦いはここから始まる。
ダンジョンへと潜る商人たちの軌跡 貴宮アージェ @takamiya_aaje
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