第11話 村長

開拓村の村長となったアルトはまず住居を建てる区域を決定し、そこに塀を建てることにした。魔物がそこら中をうろついているからだ。幸いそれほど強い魔物はいないため、今はまだ人は襲われてはいないが、このまま生活していると被害が出るのは時間の問題であろう。そのため人と魔物の区域を分けるために塀の設置を急ぐこととした。ただ女性は力仕事に不向きのため塀の内側に畑を作る準備をしてもらうことにした。草や石の撤去の作業だ。そうして二週間の時間をかけて何とか木の塀で村を囲むことができた。


この二週間の間にアルトの言葉を信じなかった者たちの中で、ウルフの犠牲になった者が一人現れた。この件でアルトの傘下に入ることになったのが五人、総勢二十人がアルトを村長と認めたことになる。人手はいくらあっても足りないが、食料もそれほど多くはない。アルトは家作りと畑作りを並行して行うように指示を出し、自分は魔物を間引きに森に入ることにした。


アルトが森に入り、食料を取ってくるようになると塀の中の人たちは何とか食つなぐことができていたが、塀の外の人間はどんどん魔物に襲われるようになっていく。アルトは助けたい気持ちもあったが自分を信用していない人間を救う程の力を持ち合わせているわけでもないため放置することに決めていた。そして一週間も経つと塀の外の人間は全滅してしまい魔物の餌になってしまった。


その間にも移住者は現れ、アルトたちを信用して塀の中へ移住する者、塀の外で独自に土地を開発する者が現れた。塀の中の人間は三十人にもなっている。このままでは食料が足りないため、アルトは村長に押してくれたホリスンを森への探索へ誘った。


「村長の頼みとあれば行きたいところですが、危険ではないのですかい?」


ホリスンの疑問ももっともだがアルトは手札を一枚晒してでもホリスンの同行が必要だった。


「実は僕、魔法が使えてね。索敵魔法っていうんだけどそれで強い魔物は避けながら森を探索できるんだ。今、この村には食料が足りないから荷物持ちとしてでもいいから同行してくれないかな?」


「もし危険があったとして、あっしが逃げてもいいのであれば同行します」


ホリスンは魔法のことを信じ切れていないが食糧の事情も分かっているため同行することを決めてくれた。それから一週間、ホリスンのおかげもあり何とか食つなぐことができている。また、ホリスンは山菜などの食料のことを知っていたため、前よりも多くの食料を調達することができた。それでも何とか食つなぐ程度なのだが。


そしてある日、山から帰ると塀の外に大勢の人が迫っていた。その人たちはこの村の村長を出せと言っている。武装していることから穏便にことを済ませることはできなさそうだ。ここで出ていく決断をアルトは迫られていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

幸せになりたくて るいす @ruis

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ