第10話 契約書
村長候補の男が急死したことに全員が驚き、アルトを除いて周りにいた人間は気味悪がってその場から離れていく。アルトは男の胸元に何かあることに気づき漁る。母さんは止めたが間に合わずアルトは何か書かれた羊皮紙を発見する。その羊皮紙は半分に切り裂かれており裂け目を見ると魔法陣のようなものが描かれていた痕跡があった。その他には契約書と書かれており、魔法契約書とこの開拓村の土地半分を交換にすること。魔法契約書の内容がばれた場合にギャレットは死亡すること。契約書の内容は他人に明かさないことが明記されていた。
アルトは周囲の人たちにギャレットとはこの村長候補の人物かを確認する。しかし、名前を知っている者はおらず死因は確定できなかったがおそらくこの契約書が原因であろうと推測した。
「この村長候補の胸元から出てきた羊皮紙によると、この契約書の内容がばれた場合、ギャレットという人物が死亡すると書かれています。僕がこの契約書の内容を確認したときにこの人が泡を吹いて倒れたことから契約によって死亡したことが推測されます」
アルトがそう説明すると周りの人間の態度はアルトの言うことを信じる者、ガキが字なんて読めるわけがないと嘲笑する者、契約書に血判を押してしまい顔が青ざめてしまっている者の三様に分かれた。アルトは言葉を続ける。
「あとこの契約書は魔法契約書というらしいです。僕はその魔法契約書というものを知らないのでどのような効果があるかは分かりませんが」
魔法契約書とは文字通り魔法を折り込まれた契約書である。効果としては魔法で契約内容を遵守させること。また勝手に破棄されることを防ぐことがあげられる。この契約書を作れる人間は少ない。そのため作れることがばれてしまえば国から追われるような存在になってしまうような代物であった。
だが、誰も魔法契約書については知らず、とりあえず今後どうやって生活していくかを検討することになった。ここでアルトの言うことを信じているようだった人間から声が上がる。
「俺の名前はホリスン。とりあえず村長候補がいなくなっちまったんだ。だから村長を先に決めないか?俺はこのガキを村長にすべきだと思う。文字が読める人間なんてそうそういねぇ。なにかあった時のためにも学のある人間が上にいる必要があると思うんだ」
この意見には先程アルトの言うことを信じていたグループと契約書に血判を押してしまった者の一部が賛成した。残りの人間はアルトのことを信用していないため自分達で決めて開拓していくということになった。
こうしてアルトは意図せずに開拓村の村長となったのであった。
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