思わせぶりのみきちゃん

@kokomaruku

第1話

「今日も終電ギリギリかぁ。」


長いサラサラロングの髪をなびかせ笑顔でみきちゃんは呟く。

最後に♡マークが付いた言い方で。


「どこに住んでるんだっけ?一人暮らし?なんの香水使ってるの?すごい良い香りだね!あっシャンプー?」


満員のおかげでバサバサまつ毛が自前だと確認できるほどの距離まで詰めることができた。

相変わらず脈略のないセリフをぽんぽん小刻みに発するみきちゃん。


「ねぇ恥ずかしいから少し後ろ向いて?」


くりっとしたお目目、高いお鼻、鼻先は丸い、おちょぼ口、お風呂上がりのようなつるんとしたお肌‥観察してたのがバレたか!はず!


「うふふ。りょうくんのお手手って冷たいんだね。」


ちょっと待って!ポケットの中に手が入ってきたんですけど!しかもバックハグかよ!手汗がやばい!

そんなことは構わず手を撫で撫でしたりさわさわしたりしてきて、ポケットという暗闇の中でとてもしちゃいけないことをしてる感覚なんですけど!

何だこの、感覚!冷静に冷静に‥!




「今日は朝まで一緒にいれるか?」


早速落ちたか‥もうちょっと楽しみたかったんだけどなぁ。こいつには刺激的すぎたかぁ。私は首をゆっくり横に振った。


「何で?明日予定があったら始発で帰ればいいじゃん!」


なんだこいつ。ボルテージが上がって一気に落とされて気分が悪くなったかぁ。自分の要求が通らないと怒るか不機嫌になるタイプだな。めんどくさ。顔はジャニーズ系でタイプだったのになぁ。次の駅でさっさと降りてタクシーで帰ろっと。


「帰ろうとしてるでしょ?帰さないよ。俺すぐ扉が閉まるボタン持ってるもん。トビラシマルボタンー。」


やべーこいつ。酔いが回ってるか。ドラえもんでも持ってないしょーもない道具名出してきたわ。


「いや、ほんとだよ。俺作ったんだよ。見てて。」


8人くらい下車したところを見計らって、スマホのアプリを起動させてpushマークのボタンをりょうくんは押した。

瞬時に閉まった‥様に感じた。


「俺の願望が叶ったね。」


最後に♡マークが付いた言い方で言わないでよね。


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