『十四歳』に関する覚書

尾八原ジュージ

お読みいただきありがとうございます

 改めて『第一回遼遠小説大賞』に参加された皆様、また評議員の皆様、お疲れさまでした。

 今回、こちらの企画に『十四歳』という作品で参加させていただきました。総評では話題にあげていただき光栄です。

本文↓

https://kakuyomu.jp/works/16816927862778188584/episodes/16816927862778206274

 さて、以下この『十四歳』を書くにあたって考えたことなどをつらつらと書きました。書いているうちにまた「文学とは……?」などとわからなくなったりしたのですが、とにかくまとめてみました。

 初めにお断りしておくと、非常に個人的な体験や感覚に基づいています。お読みになるほど何じゃそりゃと言いたくなるかもしれませんが、どうかお許しください。


 日頃小説を書くときに何を考えているかといえば、正直あまり考えていません。思いついたもの、書けそうなものを都度書いているという感じです。最近では自分の書いているものが小説なのか? というところから怪しくなってきているくらいなので、ぶっちゃけた話、第一回遼遠小説大賞、はたして私のようなものが参加して大丈夫なのか……という疑念もありました。が、せっかくの面白そうな企画ですので、なんとか参加できないかと思って色々思案しました。

 まずは自分なりに「遠くに行く小説」について考えてみました。大変難しかったのですが、その中で至ったのが

「全然関係ないときに思い出して『そういえばあれは何だったんだろう……』と思い出すような話」

 でした。

 何というんでしょう、たとえば遠投しすぎてどこかに行っちゃったボールみたいな……ふとした時に見つけて「うわーここにあったのか」となるみたいな……(すでに上手く綴れていません)。ともかくそういうものを書けたらいいのではないかと思いました。

 ところで私の中で「ふとしたときに思い出して『何だったんだ……』となるもの」がいくつかあるのですが、今回その中からEELSというバンドの『Baby Genius』という曲と、岡田史子さんという漫画家の『ガラス玉』という短編集をひっぱり出してきました。

 EELSはアメリカのロックバンドで、『Baby Genius』は『Electro-Shock Blues』というアルバムの一曲です。自分の要約する力が大変お粗末で申し訳ないのですが、「ベイビージーニアス、大きくなったね。おれはもう駄目だ」みたいな感じの歌詞で、私は落ち込んだときに聴きます。なお元気は出ません。更に落ち込むために聴きます。赤ちゃんのメリーが回っているような音も入っており、作中の「赤ちゃんのような何か」は間違いなくこの曲からやってきたものでしょう。

『ガラス玉』もまたなんと言ったらいいのかわからない、しかしとりあえず凄いぞと言っておきたいような短編集です。少女漫画らしい可憐な絵(でもなんか怖い)と、死や狂気を想起させるストーリー。うまく言えないのですが、少年少女の抱える不安みたいなものが詰まった一冊です。収録作『ポーヴレト』の中に、熱にうかされているときに夢を見るシーンがあるのですが、主人公が紙吹雪の中で「ぼくのほね ぼくのほね」と言いながら紙を拾うシーンなどは、私にとって「よくわかんないけどトラウマになったシーン筆頭」です。

 さて、この二つの読後感(うちひとつは曲なので読後感ではありませんが)を小説にしたような話にするぞ、ということで書いたのが『十四歳』でした。小説の手法は全然わからないので、外で食べたラーメンを舌だけをたよりに家で再現する、みたいな感じになってしまいましたが、とにかく目指そうとしたものです。もちろん元ネタをご存知ない方が多いであろうことは承知の上で、なお「こういう感じのスープのラーメン屋があってさぁ」と手料理を振る舞おうとしたのでした。

 果たしてそれが達成されたのか、そもそも「遠い」の解釈としてどうなんだという気もしますが、もしもこの先読んだ方の人生のどこかにヒョッコリ現れて、「あれは何だったんだ……」と思ってくださるような作品になれたのならいいなと思っています。

 またご感想の中で「ホラー」とか「怖い」といったものをいただきました。カクヨムのジャンル上は「現代ドラマ」としていたのですが、上記のとおり不安の塊を煮詰めたようなものなので、その辺りが伝わったのではないかと思い、喜ばしく思っています。


 以上、上手くまとまっているかはわかりませんが、私なりに『十四歳』の成り立ちをご説明させていただきました。なんだか愛嬌のある作品になったなぁとは思っているので、可愛がっていただけたら幸いです。

 最後に、この度は本作を書く機会をいただきましたこと、また読んでくださった方々に対し、お礼を述べさせていただきます。誠にありがとうございました。

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