『礫河を揺蕩う』
荒涼とした石と砂の世界観が好きです。
結構書いてる気がする。『君だけを濡らす雨が降る』とか『女の園のエデン』もそうですね。『重さのない瓶にきみを詰めよう』も海辺の町の話ですが雰囲気的に近いかもしれない。
舞台は十世紀以降の西域のどこか。
場所も時代も敢えてぼかしたのは、後世から鷹の目で俯瞰した歴史書の記述だけを歴史と呼ぶことへの反感もしくは考証が面倒くさかったからです。
我々が他人行儀に歴史と呼ぶものは、この時代の西側諸国の立場から正統性を与えられた史観のひとつに過ぎず、伏流していくつも流れる歴史の大河のひとつが、たまたま今現在地表に現れているだけ、というかっこつけのアレです。ゆく川の流れは絶えずして、しかももとの水にあらず。
舞台として西域を選んだのは、たぶん井上靖の『敦煌』の影響だと思います。あとは陳舜臣のなんかもあるかもしれない。あとは安部公房の『砂の女』も大好きです(あまり関係がない)。
我が国では仏と言えば木像ですが、木の豊富でない土地柄では石が仏を彫る素材として石が使われます。聞きかじった『巨大な石仏の中には何世代も掛けて彫るものがある』という話が耳に残ってて、細部だけ軽く調べてふわふわした感じのまま仕上げました。
仏師をなんでイスラム教徒にしたんだっけ?
たぶんなんか、歴史ロマンという言葉から、『回収された盗品の石像、出自も時代も、作者がどんな人物だったかも特定できないため、美術品としても資料としても価値はないが、どうしてか心惹かれてならない。その顔つきはまるでコーカソイドの――、』みたいなのを連想したんじゃないかな? そんな感じです。
作品後語り 狂フラフープ @berserkhoop
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