拾漆. 孫娘との時間 ( 最終話 )

「おじいちゃんの家って、すごくキレイ! どうして、こんなに宝石だらけなの?」


 孫娘の乃絵のえが遊びに来ると、まず、石を収集している部屋に足を運ぶ。


「おじいちゃんは、こう見えて、世界的にも有名な宝石鑑定士であると同時に、ジュエリーデザイナーなんだよ! 乃絵のえが結婚する時にも、どんなのがいいかリクエストしてくれたら、おじいちゃんが素敵な指輪やアクセサリーを作って、お祝いにプレゼントしてあげるよ!」


 まだ5歳の乃絵のえには、難しい内容だったかも知れないと思いながら、話していたが、意外にもおませさんだった。


「ホント? 嬉しい~! どの宝石がいいかな~?」


 茶色の瞳を宝石のように輝かせる乃絵のえ


「ははは、まだまだ先の事だから、ゆっくり選ぶといいよ」


「でも~、今から選んでおくの~! あっ、おじいちゃんの大好きな宝石って、どれなの?」


「これだよ、このガーネットって名前の美しい緋色の石」


 この石を見る度に、叶愛のあんの澄んだ緋色の瞳が蘇って来る。

 同時に、叶愛のあんと過ごしたあの束の間の思い出も……


「キレイだけど、赤い色しているよ。おじいちゃん、男なのに、こんな赤い石が好きなの?」


 不思議そうに尋ねた乃絵のえ


「ずっと昔にね、おじいちゃんは、このガーネットと同じ色の目をした女の子に出逢ったんだ」


「え~っ! ホントに、そんな赤い色の目の人なんているの?」


 疑わし気な瞳で見上げて来た。


「それが、ホントにいたんだよ! おじいちゃんも、信じられなかったんだけどね。こんなキレイなガーネット色の瞳の女の子が……」


「おじいちゃん、ガーネットが好きって事は……もしかして、その女の子の事が大好きだったの?」


 子供らしく率直に尋ねてきた乃絵のえ


「うん、そうだよ。大好きだったよ」


「えっ、おばあちゃんよりも……?」


 乃絵のえの瞳に戸惑いが現れている。

 上手く説明しなくては!


「おばあちゃんの事もモチロン大好きだよ! だけど、どっちの方が好きかっていうのは、比べられないな。あっ、おばあちゃんには、この事は内緒だよ」


「うん分かった! その代わり、乃絵のえが結婚する時には、キレイな宝石の指輪とネックレスを作ってね!」


「もちろんさ! おじいちゃんに任せておくれ」


 ガーネットと同じ、緋色の瞳をした女の子……

 叶愛のあんは、あの後、幸せに暮らせたのだろうか?


 きっと、乃絵のえの娘か、孫の世代に、あの瞳の色をして生まれて来るのだろうな。

 それまでは、まだまだ引退せず、ガーネットの商品価値を落とさないまま優美な作品作りに精を出さねばな。


         【 完 】


 

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緋色の瞳をした少女との約束 ゆりえる @yurieru

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