ⅩⅥ. 昂佳との記憶
何だか、長い夢を見ていたような気がする。
長い不思議な素敵な夢を……
眠る時には、いつも、左手にあの赤い石を持っている。
これは、私の唯一の宝物。
「
部屋の大型スクリーンに映し出される母と、朝食。
「は~い! 今、行きます!」
ガーネットをジュエリーボックスに入れた。
これは、私以外は、決して触らせない大切なものだから!
洗顔後、食卓に向かうと、私以外の家族は揃っていた。
「やっと、我が家のお姫様のお出ましだ!」
父が私を真っ直ぐに見つめた。
「寝坊したから、てっきり夜更かしして寝不足かと思ったけど……今朝も、美しいガーネットのような瞳をしているわね、
母の口から美しい瞳という褒め言葉。
私の瞳が、ガーネットに例えられているという事は……
「私も、お姉ちゃんのようなキレイなガーネット色の瞳で生まれたかったわ!」
聞き慣れていなかった言葉ばかりで、どう反応していいのか分からない……
こんな時には……そうだ、笑顔だ!
「ありがとう!
「ガーネット色の瞳が美しいだけでなく、心もまた美しい!
ご先祖様……って?
もしかしたら、
絶望しかなかったこの世界を希望に染めてくれて、ありがとう!
私も、
そんな風に思えるようになったのも、
「
両親が、私の頬にキスをするのは、記憶に無いほどの昔以来のこと。
何だか妙に、くすぐったいような気持ちになってしまう。
そう、私達の生きる時代は、日本でも、別れ際に家族は頬にキスをする。
その家族からのキスさえも、以前の私は、物心ついた時からキスの記憶がないほど、家族からも疎まれていた。
それが、
私がこんな風に、人目をはばかる事無く生きて行ける日が来るなんて、
いや、出逢ってからだって、何度、
周囲から突き刺すような冷たい視線にも遭う事も無くなり、こんなに家族からの愛が心地良い時間……
ずっと憧れていたけど、ずっと諦めていた世界が、今、私を取り囲んでいる!
全て、
頬のキスは家族間だけ。
口へのキスは、いくら私達の時代の日本といえども、恋人以上の存在にしかしない。
大好きなんていう感情が、自分に沸き起こるなんて信じられなくて……
伝える事すら出来ないままだったけど……
今思うと、多分、私は、21世紀に出逢って、私の瞳を『美しい』と褒めてくれたあの時点から、ずっと
今まで、誰1人として、私に向かって、『美しい』なんて……そんな風に言って来る事なんて無かった。
これから先、私の長い人生の中で愛する人と出逢う事になるかも知れない……
だけど、
形としてはガーネット以外、何一つ残っていないけど、
誰にも話したり想いを共有出来なくても、私だけの中でずっと大切にしたい!
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