訓練

惑星ソラリスのラストの、びしょびし...

はだかの王様

むかしむかし、あるところに王国がありました。王国には流行り病が蔓延り、民たちはマスクをし、つとめて外出を控えていました。マスクをしていないものは容赦なく棒のようなものでつつかれました。


あるとき国王のもとへひとりの商人がやってきました。商人は王様をみて、びっくりして、何か言いたげでした。しかし気を取り直すと懐から"無"を取り出し、こう言いました。「これは馬鹿には見えないマスクであります」と。臣下のものには誰一人としてマスクが見えませんでしたが、馬鹿だと思われるのが怖く、みなマスクが見えるふりをしました。


王様にもマスクは見えていませんでした。しかし見栄っ張りな王様は「これこそワシがつけるにふさわしい!」といい、そのマスクを買いとりました。大金を得た商人は王様を見て、臣下たちを見て、とても何か言いたげな顔をした後、目をそらすとまたどこかへと旅立っていきました。


***


馬鹿には見えないマスクをつけた王様は早速、街じゅうを練り歩き、大声でおつきのものと話し、そして飲み食いをしました。マスクをした民たちをみてはゲラゲラと笑い、「ワシのマスクは馬鹿には見えない!」と叫びました。民たちは王様になにか言おうとしますが、王様のあまりの姿に何も言えませんでした。すると一人の子供がこう言いました。

「なにもつけてないじゃないか!」

民衆も、王様のおつきのものもびっくりしてしまいました。子供は棒のようなものでつつかれました。


***


城に戻った王様は、突然強い寒気を感じました。ゲホゲホ、カーッ、ペッ。ウ゛ア゛ー゛。クソダリィナァ。王様は流行り病にかかったようでした。王様は頭から布団をかぶり、ガクガクと震えました。そして、自らの行いを悔みました。


***


翌朝になると、王様はもうすっかり元気になっていました。医者に診てもらうと、どうやらただの風邪だった、とのことでした。医者は王様を見て、次いで臣下を見て、とても何か言いたげでしたが、黙りこくって帰っていきました。


王様は民衆を集め、こう言いました。

「昨日の子供が言う通り、ワシはマスクなど最初からつけておらなんだ。馬鹿なのは、見栄っ張りなワシのほうじゃ。」

王様はすっかり心を入れ替えていました。

「王様ばんざい!」

集まった民衆は口々に王をたたえ、王を見て、とても何か言いたげでしたが、何も言いませんでした。

昨日の子供がやってきて、王様を見て、こう言いました。

「やっぱり、なにもつけてないじゃないか!」

子供は棒のようなものでつつかれました。


***


改心した国王の元、広域医療体制や検疫体制が急速に整えられ、その国は見事に流行り病を克服し、民たちは末永く幸せに暮らしました。


それはそれとして、はやり病とも馬鹿には見えないマスクとも一切関係なく、王様は終生いついかなるときも全裸でした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

訓練 惑星ソラリスのラストの、びしょびし... @c0de4

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ