???

 真っ白な光が私を包み込んだ。前はもちろん見えないし、あの変な男も見えない。目は瞑っている。この光の強さでは目など開けることすらできないからだ。


 光が消えた。ようやく目が開けられると思って目を開いてもまだ強烈な光の余韻でしっかりとした視界を得られない。


「うぅ……ん? ここは……?」


 目を覚ましたそこは古びた社が構えた森の中。ちょっと冷静に考えてみるとここはさっきまでいた神社の中だろうという結論が出た。


 だけど明らかにさっきと比べて寂れている。それに──まず時間が違う。さっきまで夕焼け雲が見えてたのに、今は目を覆いたくなるほどの日差しが差す日中だ。


「一体どういうことなの……?」


 私は戸惑いながらも神社の階段を降りていく。石造りのこの階段もところどころヒビが入り、苔がむし、年季が入っていることが窺える。やっぱりあの神社じゃないの……?


「──ここ、どこ?」


 まるで下界に降りた神さまの気分になった。


 信じられないほどに多い人だかり、みんな見たこともない小ちゃい板切れを見ながら歩いてる。


 天を見上げなければ頂上が見えないほどのビルが壁のように立ち並んでいる。ビルなんてバブルの崩壊でほとんどが取り壊されるか機能しなくなった物ばかりだったのに、そのどれもがきびきびと動き回る人を囲んで生きている。


 頬をつねる。痛い。夢じゃない。


「す、すみません」


 通りかかったおばあちゃんに声をかける。おばあちゃんは少し不思議そうな顔をして近づいてきてくれた。


「あの……ここって松下郡ですよね? ほら、あの河北神社で有名な」


 そう尋ねるとおばあちゃんはもっと不思議そうな顔をした。何を言っているのかというように首を傾げつつもおばあちゃんはこう答えた。


「お嬢ちゃん、松下郡なんてとっくのの話だよ。ここは仙蔵町、松下郡はええと、確か20年前に仙蔵と合併したんだよ」


「……え?」


 まるで知らない町はかつて私が生まれ育った町、私は20年後の未来へとタイムスリップしてしまった。

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