止まらない興味
「あっははは! この私に邪魔とは! お前、面白い人間だな!!」
面白い。
やはり面白いぞ、この子供。
なんと清々しい態度か。
盲目的に崇められるより、何倍も気分がいい。
「なんで喜ぶんです…? こうすれば、怒って消えていくと思ったのに……」
彼は苦々しく顔を歪め、溜め息をつきながら起き上がった。
それで空いたスペースに腰を下ろすと、途端に不機嫌丸出しの
「勝手に隣に来ないでくださいよ。」
「まあまあ、そんなにむくれるな。一体、何故私を煙たがる?」
「あなたが僕に、面倒な未来しか持ってこないからです。」
「それはなんだ?」
「言えば、自重してくださるので?」
「いや? むしろ、喜んでその未来を持ってくるかもな。」
「じゃあ言いません。あなたが僕に苦労を吹っかけて楽しむ
初めて会ったというのに、なんだか旧知の仲と話しているような気分だ。
「こんな所にいたら、これ見よがしに〝会いに来い〟と言ってるようなものだとは思わなかったのか?」
「あなたならどうせ、僕がどこにいたって、そのうち会いに来るでしょう?」
いちいち言わせるな。
彼は露骨に態度でそう語っていた。
面白いので彼がまた口を開くまで待っていると、彼は全力で嫌な顔をしながらも話し始めた。
「みんながいるところで猫を被って疲れるか、
「なるほど。だが残念。打つ手が逆だ。私は今ので、お前のことをかなり気に入ってしまった。」
「………っ」
意地悪心でそう言ってやると、彼は頭痛でもこらえるように頭を押さえてうなだれた。
「誰も彼もを人形のように操れるとは思わないことだな?」
「言われずとも、そんな幻想は
間髪入れずに言い返してきた彼の声が、一気に冷たく
今の言葉は
それと同時に彼の全身から
「ほほう……その歳にしては、驚くほど濃厚な魔力だな。お前が十歳まで〝知恵の園〟に見つからなかった道理が分からん。」
こんなにも強力な魔力だ。
ここ半年や一年で一気に成長したというわけではなかろう。
今でこのレベルに至れるほどの素質を持つなら、魔法を教え始める五歳の頃には、ここに連れてこられてきてもおかしくなかったはずだが……
「実家に、ちょっとお節介焼きなペットがいましてね。僕の魔力が強すぎることを心配して、魔力が安定するのと同時に制御方法を教えてくれたんですよ。ついでに、予知能力との付き合い方もね。ここに来るまでは―――」
次の瞬間、彼に
「……ね? このとおり。」
そう言って微笑む彼は、どこにでもいる平凡な子供だった。
なんという化けの皮だ。
この歳にして、五年もの間〝知恵の園〟から隠れおおせたというのか。
末恐ろしいったらありゃしない。
「ああ……そうか。」
その時、脳裏に引っかかっていた疑問が解消する。
「お前、確かタリオンの出だったな。ペットなどと言いおって……あやつらが聞いたら怒るぞ?」
「そう言われるのが嫌なら、ずっと人型に化けてればいいんですよ。そしたら同居人で済むのに。」
彼は悪びれもなく、そんなひねくれたことを言う。
肝が
タリオンで大事に秘匿されている守護獣の存在を
「それで? わざわざ魔力を隠していたくせに、今さらになってここに来たのは何故なのだ?」
興味がそそられるとは、なんとも不思議な心地だ。
どこからともなく、訊いてみたいことがぽんぽんと出てくる。
あんなに巧妙に自分の魔力を錯覚させられるのだ。
〝知恵の園〟が彼の存在に気付いたということは、彼が魔力を隠すのをやめたということだろう。
それはつまり、ここに来たのが紛れもない彼の意思だということに他ならない。
「………」
その時、彼の目がふと遠くを見た。
しばらくすると……
「僕、結婚したくないんですよね。」
ぽつり、と。
彼は小さく呟いた。
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