苦悶の中で

 何故だ…?

 何故だ!?



 私は焦りと苛立ち、そして心をむしばむ苦しみに悶えていた。



 世界を終わらせてしまえ、と。

 必死に綻びを探すが、それが見つからないのだ。



 至るところに目をらす中で、大陸を消してしまえるような天変地異を招く綻びは、いくつか見つけることができた。



 しかし、それを絶とうとすると手が震える。

 どうしても、体が動かない。



 だめだ。

 だめだ。



 この世界を終わらせてはいけない。

 私の役目は、そんなものじゃない。



 私は、人間とは違うのだろう?

 一時の感情に流されて世界を滅ぼすなど、愚かな人間の行いと何が違うのだ?



 私は、神としての誇りを自ら捨てるのか?



 そんな使命感と自尊心が、私を引き止めるのだ。



 感情と本能の板挟みに遭い、私は身を裂かれるような苦しみにのたうち回った。

 頭ががんがんと痛み、本能の叫びが心を大きく揺さぶってくる。



 こんなにも壮絶な苦しみを味わうのなら、世界の終焉など諦めて、これ以上人間を憎まないように、人間から離れてしまった方が楽なのでは?



 そんな逃避願望にすがりつきそうになりながらも、私は必死に考えた。



 何故だ…?

 何故、世界を終わらせてはいけないのだ?



 こんな世界の一つが滅んだところで、痛くもかゆくもないではないか。

 それなのに何故、私はこの世界にこんなにも執着する?





 ――― この気持ちは、





 ふと脳裏によぎった、素朴な疑問。



 それが、全てが狂い始めるきっかけだった―――……


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