1話 僕
高校2年。
黒い髪に大きい瞳。
顔は特に悪くないと思う。
背は高くも低くもなく。
勉強はそこそこ。
友達はおらず、学校で話すことなどほとんどない。
多少?
少し?
普通とはちょっと違うかもしれないけど基本的には普通だと……思う。
「なあ〇〇」
クラスの誰かが話しかけてきた。
「……何」
しばらく話すと彼はどこかへ行く。
学校は終わり、家に帰る。
家に着くと服を脱いで洗濯機に放り込む。
少ししたらバイトに行って、帰ってきたらカップ麺を作る。
それから学校の用意とかして寝る。
したいこととかもないし、楽しみなこととかもない僕は必要最低限だけする。
家には親もいない。
一人暮らし。
ほぼ毎日カップ麺かコンビニ弁当。
当然親も誰もいないので誰に文句言われるわけでも叱られるわけもない。
その生活が幸せかどうかは僕にはわからない。
他にすることと言えば考え事かな。
僕はどうして生きてるんだろ。
生きてる意味なんてあるのかな。
楽しいことも嬉しいこともない僕はよくそういう考え事をする
考え事しながら眠りにつく。
これがいつもの僕だ。
そして2年が始まってしばらくした頃。
当然誰かに話しかけられても塩対応な僕はクラスで浮いた存在になっている。
別にそれに対して何か思うことはない。
ほんと何も思わない。
なんでだろな。
どこか諦めているのかもしれないがわからない。
いつからか人に対しての感情なんて捨てているから。
いつものように。
いつでも一人だ。
そんな日々の中。
僕は光を見つけた。
その光はただの中学生で女の子。
結構可愛いけど多分探せば彼女より可愛い人なんていくらでもいるだろう。
そこじゃないんだ。
僕が彼女を光と思った理由は笑み。
彼女はずっと笑っていた。
少なくとも僕が彼女を見た時、必ず誰といても笑っていた。
最初は光だとかは思わなかった。
ただ能天気に笑ってるだけなんだと思っていた。
けどある日彼女は笑わなくなった。
約半年、見ていて笑わない時がなかった彼女が。
それから僕は彼女を追いかけた。
追いかけたと言うより付け回し他の方が正しいかな。
れっきとした犯罪ということはわかっている。
でも気になったら止まれない。
家、学校、休日。
どれにおいても彼女を見ていた。
その中で気づいた点がある。
一つ目は日々怪我が増えていると言うこと。
二つ目はだんだん笑わないどころか瞳から光が消えていっていたことだ。
そこから思うのはおそらく虐待、いじめ。
多分その辺だろう。
虐待やいじめは最初のうちは抵抗とかするんだけどなんだろうね。
だんだんする気力も無くなってくる。
そして気づくんだ。
感情を持つから辛いんだと。
抵抗するからひどくなるんだと。
そこからはもう暗闇だよ。
沼でもある。
そこの見えない真っ暗な泥沼。
あくまで僕が見たことからの推測と想像でしかないけど多分そう。
その結論になぜか僕は安心した。
――――――――――――
結論が出て数日。
彼女をいつものように見ていると、急に彼女がいつもの道じゃない方向に進み出した。
家に向かう道とはちょうど90度違う方向。
何も考えず僕も後を追う。
家から離れ、隣町まで来て、それでもまだ進む。
彼女の顔は見えない。
どんな顔をして歩いているのか。
しばらく歩いて彼女の家から二つ隣の町まで来た。
そこは水喪川と呼ばれる川があり、そこにかかっている橋から飛び降りる人が後を絶たない。
遊びで飛び込む人もいれば、死のうとして頭から飛び込む人もいる。
その橋の真ん中、一番川から高い位置。
もっとも自殺志願者が立ち止まる位置。
彼女はそこに立ち止まった。
ゆっくりと橋から下を見下ろす。
そしてゆっくりと橋から飛び降りた。
彼と彼女の秘密の関係 KID @kid9696
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