第121話 Frohes neues Jahr!

【晩酌雑談】一緒に年越し!うたみた同時視聴も!【リーゼ・クラウゼ/黒惟くろいまお,liVeKROneライブクローネ


「次の大きなトピックといえばもちろんリーゼのデビューだろうな」

「それはそうなのですが……いつも見ていた所にわたくしの名前が載っているというのも不思議な気分です」


 :なかなかインパクトが強かったなぁ

 :デビュー配信見返す?

 :なんだかんだそんなに変わってない気がする

 :推しのWikiに名前が載るとかやばない


 まお様のデビュー配信振り返り……もといliVeKROne加入発表配信の次は当然ながらわたくしリーゼ・クラウゼのデビュー配信である。


「流石にまだデビュー配信振り返りはしていないんだろう?」

「はい、といってもすでに振り返るのが怖くなってきているのですが……」


 :一周年が楽しみだなぁ

 :あの魔法の反応が楽しみすぎる

 :liVeKROne一周年は二人の振り返りだな

 :デビューから二人の関係性って変わった?


 配信の振り返り自体はしていないが三ヶ月前の事であるし、あの時の緊張とどんな事を話したかは鮮明に覚えている。……もちろん、ちらほらとコメントでも言及されているあの魔法についても。今度はこちらの番だとばかりに笑みを深めて問いかけてくるまお様はもう酔いが回ってきているのかいつにもましてご機嫌である。


「デビューしてから二人の関係性が変わったか?そうだな、もちろん変わったところもあるし変わらないところもあるが……。一番は我に対して遠慮がなくなったな」

「まお様がお優しいのでつい……。もちろん憧れの魔王様という思いは微塵も変わりありませんが、いい反応を頂けるので」


 :わかる

 :それはそう

 :いい同期になったなぁ

 :てぇてぇ


 配信開始前のやりとりもそうだが、からかったり無茶振りをしたときの反応が配信内外問わずにとてもいいのだ。それは古くからの黒惟まおリスナーたちの間では周知の事実であるだろうし、配信外での姿も知って余計にそう思うようになった。


「その次のトピックというとリーゼの初コラボか、3Dお披露目でも呼んでいたしすっかりいいコンビになってるんじゃないか?」

「はい、それは本当に。サクラ子の方からどんどん来てくれるので本当にありがたいです」

「すっかりサクラ子呼びも定着したようだからな、龍魔コラボも今となっては二人のことを指すようになってると聞いたぞ?」


 :サクラ子呼びの経緯がてぇてぇんだよな

 :サクリゼてぇてぇ

 :初代龍魔コラボもまた見たいぞ

 :ちょっぴりさみしいまお様なのであった


「まお様との龍魔コラボがあってこそのわたくしたちですから、それにサクラ子もまお様とコラボしたいけど中々できなくて寂しがってましたよ?」

「なんだてっきりリーゼに夢中だと思っていたが、そんなかわいらしい一面もあったのか」

「お二人共とてもお忙しいですから、わたくしも龍魔コラボファンとしては楽しみにしてるんですよ?」


 :そりゃそうでしょ

 :サクラ子かわいい

 :これサクラ子聞いてないかなw

 :これ聞いたサクラ子の反応が楽しみだ


 とにかくガンガン押しに押しまくるのがサクラ子のコミュニケーションスタイルだけども、それ以上に気遣いの人なのである。だからこそたくさんの同業者やファンから愛されている訳で。もちろんそんなことはまお様も重々承知だろうが初代龍魔コラボに向けたちょっとしたアシストとしてエピソードを紹介するくらいならサクラ子も許してくれるだろう。


「そして次は第一回ラジオクローネですねっ」

「最初はどうなることかと思ったしスケジュール的に厳しいときもあったがここまで四回も続いてるのはリーゼの頑張りがあったからだと思っているよ」

「そんなっ、わたくしから言い出したことなのに本当にまお様に助けられていて……。準備も当番制にしていただいて、うたみた動画まで」

「企画物の大変さはよく知っているからな、同期としてliVeKROneの名を冠した企画に協力するのは当然だろう?それに動画の方もこうやって理由付けしないと最近はなかなか時間が取れなくなってきているからな。今となってはいい機会がもらえたと思っているよ」


 最初はまお様とのコラボ企画として立案し実験的な試みで始まったラジオクローネであるが、リスナーからも事務所からも評判が良く半ばliVeKROneの公式企画みたいな立ち位置になりつつある。そんな中でも好き勝手やらせてもらえているのは色々な人の協力あってのことであるし、間違いなくまお様がいなければ成り立っていなかっただろう。


「我の引っ越しまで別にliVeKROne年表に載せる必要はないだろう……」

「まお様に関することはすべて記録するに値する事柄ですから」


 :いる

 :必要

 :リーゼちゃんとの同棲記念

 :ちょうど欲しかった


 呆れたように言葉を発したまお様の目線の先には『まお様新居へ引っ越し』と記された年表がある。もともとまお様個人の非公式Wikiであることを考えるとどんな些細なことも残しておきたい気持ちはわかるし、推しが新居へと引っ越したとあればそれは記録せずにはいられないだろう。


「それに別にリーゼと同棲してる訳じゃないからな?どうしてこうもリスナーたちは我と誰かを同棲させたがるんだ」

「SILENT先生との同棲なんてお話も昔ありましたよね」


 :実質同棲みたいなもん

 :あれはあんな写真上げるのが悪い

 :もう同棲しちゃいなよ

 :同じ建物だし


 同じマンションに住んでいることは公表しているわけではないけど、ファンたちの間では当然のように同じマンションしかも隣の部屋であることは周知の事実のように扱われている。頻繁に遊びにいったり突発で配信に現れたりで隠しているつもりもないのでそのような扱いを受けるのは想定内ではあるのだが。


「あー、またずいぶん懐かしい話を覚えているな」

「おそらくこちらの非公式WikiにもSILENT先生との同棲疑惑について書いてあったと思いますよ?」

「本当になんでも書いてあるんだな……」


 :もともとまお様非公式Wikiだし

 :まお様の女でシェアハウスしよう

 :あとでまた見直そう

 :まじで情報量半端ないからな


「お引越しの後だとSERAPHIMラジオですね。このあたりから一気に忙しくなった感じがいたします」

「ラジオは収録から公開まで結構期間があったから時期のイメージが掴みづらいが、たしかにこのラジオの反響はすごかったな」

「わたくしもこの企画のお話自体は公式発表のタイミングで知ったので本当に驚いたんですよ?」


 :天使ちゃんラジオ!!

 :まじで最初驚いたからなぁ

 :まお様ラジオデビュー!

 :とうとう来たかって感じだった


 時期的には3Dお披露目に向けて動き出していた頃であったし、ちょうどVtuberという存在が徐々にではあるがインターネット以外のメディアで取り上げられ始めたところに大手レーベルが売り出しているアーティストである天使沙夜あまつかさやさんとのラジオが全国に流れたのだ。その反応はわかりやすく、企業から案件の依頼や各種メディアへの出演依頼といった形で我々のスケジュールを埋めていった。


「今だから言えるが、もうこの時点で3Dお披露目に向けて色々と動いていたからな……本当に沢山の者に支えられているんだと実感したよ」


 どこか遠い目をしているまお様の脳裏にはきっと奔走した日々とそれを支えてくれた人たちの姿が浮かんでいるのだろう。日々の配信にレッスン、そして配信では言えないようなトラブルや悩み。それらは当然この年表には記されていないしリスナーたちにも知らされていない。ただのリスナーであったときはまお様のことであればすべてを知りたいと思っていたが、自身が配信者になってからはそういったネガティブなところは極力見せないようにしたいという気持ちもわかるようになってしまった。


「そのあとすぐに3Dお披露目の告知をして、お披露目、クリスマス企画と本当に駆け抜けていきましたから……。携わってくださった方々に、もちろんリスナーの皆様には感謝してもしきれませんね」


 :ありがとう!

 :こちらこそだよ

 :駆け抜けたなぁ

 :来年も駆け抜けよう!


「おっと、なんだかんだ年表を振り返っていたらかなりいい時間じゃないか」

「結構時間あると思っていましたが意外とあっという間でしたね」


 :ほんとだ

 :気づかなかった

 :年越しジャンプしよう

 :年越しだー!


 年表がちょうど3Dお披露目あたりに差し掛かってきたあたりで声につられて時刻へと目を向ければ年越しまであと数分。喋り始める前はきちんと時間を気にしておこうと思っていたのに配信に夢中ですっかりその意識を忘れてしまっていた。まお様が気づいてくれなかったらいつの間にか年を越していたなんて自体になっていたのは想像に難くない。こういうところでもまだまだ配信者としての意識というか力量の差を思い知らされてしまうのだ。


「そういえばドイツは新年を花火でお祝いすると聞いたが」

「そうですね。こちらでいう大晦日と元旦には普段禁止されている派手で大きな打ち上げ式の花火が解禁されるので……、ものすごい大騒ぎになると聞いています」

「その言い振りだと流石にリーゼの周りではそこまでではなかったのか?」

「そうですね、屋敷の周りはそれほど人はいませんでしたし。お父様はそういった人間のイベント事にはあまり興味がなさそうでしたので」


 :お屋敷!

 :リーゼちゃんお嬢様だからなぁ

 :リアル魔界のお姫様やん

 :ドイツの花火やばいからな


「ただ……、その花火が楽しそうでこっそり魔法で似たような事はやっていました」

「それは随分と楽しそうだ」


 :かわいい

 :なにそれかわいい

 :魔法って便利だな

 :やってやってー


 つい調子に乗って魔力の出力を上げすぎて、何らかの襲撃かと一帯を警戒状態にさせてしまった失敗談もあるのだが……。それは自身の名誉のためにも言わないほうがよさそうだ。


「さすがに室内では魔法とはいえできませんからね?ではそろそろカウントダウンと行きましょうか」

「せっかくなら日本語とドイツ語でカウントダウンと新年の挨拶をしようじゃないか。挨拶はたしかフローエス・ノイエス・ヤーだったな?」

「Das ist richtig!正解です!」


 :おお

 :まお様ちゃんと勉強してる

 :10までならなんとかドイツ語でいけるわ


「では十秒前から我からいくぞ?……十」

「neun!」

「八……」

「sieben!」


 いよいよ、新年へのカウントダウンを迎え画面に表示させた時計に合わせて二人で言葉を重ねていく。それと同時にコメント欄でも大量の数字によるコメントが流れ始める。といってもどうしてもラグがあるせいでコメント欄は中々カオスな状態になっているのだがそれすらもお祭り感があって楽しい。


「六」

「fünf!」

「四……」

「drei!」


 ひとつ数を口にするたびにお互いの顔とコメント欄を交互に見比べ笑みを交わす。その楽しさといったらいつか遠くで見聞きした故郷での大騒ぎにも匹敵するんじゃないかと思う。それも大好きで大切な人達と一緒にいるのだから尚更だ。


「二っ」

「eins!」


「あけましておめでとう!」

「Frohes neues Jahr!」


 :あけましておめでとう!!

 :ハッピーニューイヤー!

 :フローエス・ノイエス・ヤー!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

魔王系Vtuberやっていたら本物の魔王にされそうです。 ゆゆっけ @acenon

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ