第120話 同時視聴と振り返り
【晩酌雑談】一緒に年越し!うたみた同時視聴も!【リーゼ・クラウゼ/
「いきなり
「そういうところを見れば意味も発音もきちんと伝わっていたみたいだな」
:プロージットは知ってたけどポーストって言うのか
:まお様ドイツ語いけたり!?
:結構発音いい気がする
コクリと口に含んだワインを飲み込み同じようにグラスから口を離したまお様に向かって素直な感想を漏らす。
「ええ、とてもお上手でした。知っていたのですか?」
「リスナーたちと同じでPrositは知っていたがな、Prostはその省略でこっちの方がポピュラーなんだろう?」
「そうですね、南の方だとPrositが多く使われるようですが全体で見るとProstの方が一般的ですね」
:へぇ
:そうなんだ
:リーゼ先生!
:日本だとPrositが有名やからな
「昔ほんの少し創作のためにドイツ語に触れていた事もあったが、いい機会だから最近少しずつ英語と一緒に調べてたのが役に立って良かったよ」
「良いですね!わたくしでよければいつでもお教えするので!」
:まお様もゆくゆくはトライリンガルに
:英語喋れるようになりたいなぁ
:海外ニキ増えてきたもんな
何事も要領よくこなしてしまうまお様の事だ、案外あっさりとドイツ語も話せるようになるかもしれない。本人は英語は苦手なんて言っているけど結構理解できているようにも思える。
「まだまだリーゼのようにはいかないが……、そういえば乾杯の時じっとこちらの目を見つめてくれたがそういう作法でもあるのか?」
「ご存知なかったんですか?まお様もしっかりと応えてくれていたので知っているものと思っていたのですが……」
「あぁ、見つめられてるのに目をそらすのも失礼だろう?まぁ乾杯のときにこんなに見つめられるのもなかなか無かったから物珍しさはあったが」
:見つめ合う二人
:あら~^
:君の瞳に乾杯!?
:てぇてぇ
こちらでは珍しいらしい乾杯の作法を自然と返してくれたのでてっきり知っていて合わせてくれたとばかり思っていたがそうではなかったらしい。であれば自然な振る舞いだったという訳で……。それを難なくこなしてしまうあたりがまお様のまお様たる所以というか、そういうところですよと思わず言いたくもなってしまう。
「目をしっかり合わせるというのは信頼関係の現れですから、それに乾杯の時に目を合わせないと不幸が起こるなんて言われてるんですよ?」
「たしかにそうだが……、日本で暮らしているとなかなか難しく感じてしまうかもしれないな」
:海外の人って目合わせてくるイメージある
:まぁ日本人はなぁ
:乾杯のときはグラス見てるわ
:なんかググったら恋人との関係がうまくいかないとか
たしかにこちらに移り住んでからあまり目を合わせて話してくれる人が少ないとは感じることが多かった。最初は自身が外国人であるからとも思ったのだが文化的にあまり目を合わせることは少ないらしい。
「ほう、恋人との関係がうまくいかないらしいがそういう不幸が起きてしまうのか?」
「ええと……、そうですね。そういう風にも言われています」
「ん?ではリーゼと同郷の者と合った時には気をつけなければならないな」
:へぇ
:調べたら夜の営みって書いてあるんですが
:関係(意味深)
:>>7年間恋人と良い夜が過ごせないと言われています
言葉を濁したがコメントの言う通り正確にはそういう言い伝えがあるのだ。まお様ももちろんそれらが目に入っている訳で少し関心したような素振りを見せたあとに仕方ないやつらだとばかりに薄く笑みを浮かべてコメント欄を眺めている。
「さて……そんな話をしているうちにうたみた公開のカウントダウンが始まったようだな」
「あっ、本当ですねもうそんな時間……」
:鼓膜ないなった
:やっぱちょっとラグあるか
:鼓膜交換した
:爆音定期
:きちゃ
まお様の言葉をきっかけに待機用のサムネイルから公開前のカウントダウン動画へと変わった画面へと目を向ける、いつもおなじみの大音量カウントダウン動画であるが視聴用にしっかりと別端末が用意されているので音声が混線する心配もない。それでもそれぞれのイヤホンからまだ耳につけてすらいないのにカウントダウンの音が漏れ聞こえてくるというのだから相当な音量だろう。
:はじまった
:やっぱりSILENTマッマが描く二人は最高やなって
:生歌も良かったけどこっちもいい
:ほんと毎回クオリティ高い
カウントダウンが終わり曲が流れ始めると共にまお様が作成したMVが画面を彩る。いつものようにイラストはSILENT先生が我々二人を描いてくれている、いつもの姿を少しアレンジしたような白と黒のドレスを身にまとったまお様と
思わずコメントをするのも忘れて画面に見入っていると数分足らずの動画はすぐに終わりを迎え、はっと今が配信中であることを思い出し反射的にまお様の方へと顔を向ける。
「どうだった?」
「すいません、配信中なのについ見入ってしまって……」
:わかる
:完全にリスナーだった
:(見入ってるリーゼちゃんを)同時視聴
:リーゼちゃんは初見だったの?
どうやら、配信を忘れて見入ってしまっていた姿はまお様とリスナーたちに見守られていたらしい。なにか話しかけてくれても良かったのにと思わないでもないが結局は自身のせいなのでただ謝ることしか出来ない。
「別に謝る必要はないさ、その反応は製作者冥利に尽きるというものだ。たしか今回のは完成したものはリーゼに見せてなかったはずだな?」
「ええ、まお様のチャンネルで投稿される時はだいたい初見ですね。わたくしのチャンネルで出す時はデータ頂いてるので予め見ていますが」
:へぇ
:じゃあ俺たちと一緒だ
:いいなぁ
:感想はー?
「感想ですか?それはもちろん毎回素晴らしい作品になっていて言葉では語り尽くせないのですが……。そもそもわたくしがまお様と一緒に歌った曲にSILENT先生がイラストをつけてくださった上にまお様自身の手で動画を作ってくださってるという事だけでどんなに幸運なことかと……」
:あっ
:スイッチ入った
:まお様スイッチON
:ノルマ達成
:これが今年最後のスイッチONか
「……この演出ですが、たしか昔の作品でも見た記憶があるのですが。たしかあれは……、あぁ思い出せない!もう一度見てもいいですか!?もしくはいまから昔の動画の確認を……」
「本当によく覚えているな。たしかに最近はあまり新しい手法に取り組む時間もなかなか取れないのでどうしても自身の引き出しの中から引っ張り出す事が多いから見覚えある場面がたくさん出てくるんだろう。昔取ったなんとやらってやつさ」
:まお様の動画見返すかー
:まお様MV同時視聴会始まる!?
:それがまお様の味だったりする
:忙しいもんなぁ
語りに熱が入ってきたところで不確かな記憶にその勢いを止められてしまう。そんなもどかしい思いを持ちつつも語り続けていたせいで喉の水分が持っていかれてしまったのでグラスに残ったワインを一口。そんなわたくしを微笑みながらいつも通りチビチビとグラスを傾けつつ見守ってくれていたまお様の表情に少しだけ自嘲するような色が見える。
「まお様本当にお忙しいですから……。そんな中、こうやってまお様の動画が見られるだけでもわたくし含めてファンの方は嬉しいと思いますよ?わたくしもなにかお手伝いできればいいのですが……」
:それはそう
:本当に嬉しい
:liVeKROneに入ってからほぼ休みなしでしょ
:休み(裏作業)
:身体労ってもろて
「ありがとう、嬉しいよ。……さて、あまり愚痴っぽくなっても酒が不味くなってしまうか。同時視聴も終わったことだし年越しまで今年を振り返ろうじゃないか」
「そうですねっ、ではでは振り返るのにちょうどいいものがあるとリスナーの皆様からご紹介いただいたものがありまして」
若干湿っぽい空気になりかけていたところを切り替えるように、クイっと残りも少なくなっていたグラスの中身を空にしたまお様からの目配せを受けて話題を次に移していく。
「まお様liVeKROneの非公式Wikiって見たことありますか?」
「あぁ知ってるし時々見てるぞ、有志でまとめてくれているサイトだろう?」
:非公式Wikiやんけ
:非公式Wiki有能すぎるんだよなぁ
:むしろこれが公式みたいなところある
:まお様巡回済みか
いちおう非公式ではあるので配信外にサイトを表示させその画面を二人で覗き見る。この非公式Wikiはもともと黒惟まお非公式Wikiであったのだがまお様がliVeKROne所属になると共にliVeKROne非公式Wikiに生まれ変わりリーゼ・クラウゼことわたくしのこともまとめてくれているのである。その内容はそれぞれの紹介に始まり、配信の記録であったり記念日がまとめてあったり本人ですら忘れてしまっているような細かいところまで網羅されているというのだからまとめてくれている方々の熱意には頭が下がるばかり。わたくしがまたただのまお様ファンであったときもよくお世話になっていた。
「ここの年表が本当によくまとまっていて、これを見ながら振り返っていきたいと思います」
「といっても我がliVeKROneに所属してからだから三ヶ月くらいだろう?そんなに項目は……ってこんなにあるのか」
「本当なら一月からまお様について振り返りたいところでしたが……」
サイトをクリックしてliVeKROne年表を表示させるとまお様のliVeKROne加入発表配信があった九月からズラッと本当に色々な出来事がまとめられている。わずか三ヶ月だけでこの量ということは、liVeKROne以前のまお様一人だけの活動記録だけでもものすごい数の項目が並んでいるのである。
「それだとliVeKROneの振り返りではなくて我一人の振り返りになってしまうだろう」
「それはそれで……というわけにもいかないので、一番最初はまお様のデビュー配信振り返り配信ですね!」
:それはそう
:リーゼちゃんは本望そう
:年越して正月終わるまである
:なんなら三ヶ月でも年越すんじゃ
「いや、liVeKROne加入発表配信だろう?っておい、年表の方も初配信振り返りの方が先になってるじゃないか。直せ直せ」
「それほどにインパクトが大きかったということですよ」
たしかにまお様の言う通り配信のお題目はliVeKROne加入発表であり、その記念としてユーザアンケートによって決まったデビュー配信振り返りはそのなかの企画にすぎない。ただし、これによって再び火がついたまおにゃんブームの事を思えばこんな表記になっていても仕方ないという気もしてしまう。
「これも最初はわたくしコメントでも参加する予定はなかったんですよね」
「リーゼは最初見学だけの予定だったからな……、それがスタッフの悪ノリもあってああなった訳だ」
:草
:最初から暴走リーゼちゃんの片鱗見せてたからな
:スタッフの英断
:この時にはもう……
「たった三ヶ月前のはずなのに懐かしいですね」
「それだけ色々あったということだろう、我としては忘れてしまいたい記憶だが」
:まじであっという間だった
:もう三ヶ月かぁ
:まおにゃん3Dが実現するとは思ってなかった
:デビュー配信振り返りを振り返る配信してもろて
「振り返りの振り返り配信?そんなものするわけないだろう」
「え?来年のliVeKROne加入一周年企画でやるんだってスタッフの方々が意気込んでいたような気が……」
「運営にはよく言って聞かせる必要があるようだな……」
:草
:運営もノリノリである
:まおにゃん愛されすぎてる
:楽しみすぎる
:これはやるしかない
あのスタッフたちのことだ。何が何でも実現してしまうのだろうなという思いと共になんだかんだとそれに付き合うまお様の姿が目に浮かぶ。それにその際は全力で協力するつもりであることは打ち明けないでいた方がよさそうだ。
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