第4話 黄泉がえりのダンジョン3

 持久戦が始まって数百年。俺達は未だにボスと戦っていた。


 そしてボスを倒す度に装備が貰えるため、俺達の装備大変なことになっていた。


 カンナ

 妖刀【星詠い】

 星龍のコート

 虚龍の篭手

 星龍のブーツ


 ローズ

 レイピア【フローライト】

 星龍のドレスアーマー

 輝龍のブーツ


「ローズ。これっていつまで続くんだ?」


「さぁな。検討もつかん。終わりの時はまた何かあるだろ。」


 片手間で襲って来たボスを倒しながら会話していると、


 これより最後のボスが出現します。注意してください。


「ようやくか。長すぎるだろ。一体どのくらい戦ってたんだ?」


「私の体感でなら、少なくとも百年は超えてるだろ。」


「その間ずっとボスとの戦闘だもんな。っとどうやらお出ましのようだ。」


 上空から人の形をした何かが降りてきた。


「よくぞここまで生き残りました。その褒美に楽に死なせてあげましょう。」


「なんか偉そうな奴が出てきたな。」


「私達を殺すとな?舐められたものだな。」


 そう言うと俺とローズは攻撃をした。


『断絶』


『カタストロフィ』


 空間すら切り裂く斬撃と全てを消し飛ばす魔法がボスに当たる。


「ローズ、手応えが無いぞ。」


「あぁ分かってる。どうやら私達をよっぽど生き返らせたくないらしい。」


 ボスはダメージを受けていなかった。


「物理無効に魔法無効か。いくらなんでもやりすぎだろ。」


「そうだな。だが何も出来ない訳では無いぞ。」


 ローズが意味ありげに言ってくる。俺はその意味を理解しているが、あまりやりたくはなかった。


「あれをやるのか?リスクがでかいからやりたくはないんだが。」


「そうだな。今の私達では正直厳しいだろう。だけどあれを使えばリスクをかなり無くせるのでは無いか?」


 戦闘が始まってから、1度も使う機会が無かった、星樹の果実。


 それを使うつもりらしい。


「確かにあれを使えばリスクをかなり無くせるな。だけどそれだけでいけるのか?」


「そこでだ。私達がここに来るきっかけになった事をしようと思う。」


「正気か?」


 ここに来るきっかけとなったこと。つまりまた身体を貫くことをすると言うのだ。


「正気だとも。何も狂って言った訳じゃ無いぞ。ただ受けた傷を治せるから、ついでに私達自身を強化しようと考えただけで。」


 語尾がどんどん小さくなっていってる。


「まぁいいぜ。どうせ何かしなきゃ、あいつを倒せないんだ。やれることはやってしまおう。」


「話はまとまりましたか?」


 ボスから声がかかる。どうやら待っていてくれたらしい。


「待っていてくれるとは優しいな。お陰で、やることが決まったよ。」


 そう言いながらローズの横に立つ。


「それに私達は生き返ってやりたいことがあるのでな、ここでやられる訳にはいかないんだよ。」


 そして俺達は抱き合った。


 俺はローズごと、ローズは俺ごと持っていた武器で貫いた。


「何を!?血迷いましたか!」


 ボスが騒いでるが気にし無い。


 それぞれ刺した武器を抜くと、星樹の果実を口に含みキスをした。


 ――その瞬間、2人を中心に力の奔流が吹き荒れた。


「何が起きているのです!?それに今のは星樹の果実!何故そんなものを!」


「そんな事どうでもいいじゃないか。」


「今は自分の心配をしていた方がいいとは思うぞ?」


「にしても、口付けする必要はあったのか?」


「そっちの方が雰囲気出るだろ?」


「お前なぁ。」


「あなた達は一体何者です?それに先程のは星樹の果実、どうやってそれを?」


 何やら俺達が食したものに文句があるらしい。


「あれか?ここに来た時生えてた木になってたぞ。」


「くっ!たとえあれが本物だとしても私には攻撃は通らない。結局あなた方は何も出来ないのですよ。」


「そうとも言えないぞ。私達は今、なんでも出来そうなのだからな。」


 ローズは自信満々に言う。そして、


 ――同時に手首を切った。


『『我が血よ大地を染めよ!』』


 そう唱えると、流れ出した血が大地を赤く染め始めた。


「このダンジョンがお前の領域なら、侵食してしまえばいい。」


「私達は吸血鬼だからな。血の扱いは得意とする分野だ。」


「そしてお前にダメージを与えられないのなら、与えるようにすればいい、それがこのダンジョンによるものならダンジョンごと侵食すればこっちのもんだろ?」


「そんなデタラメなことを!?いくらあなた方が強くてもダンジョンを侵食するなど血が足りないはず!」


「デタラメなことでも出来んだよ。そのためにさっきのことをしたんだからな。」


「それに私達はお互いの血が混じりあってるんだ。カンナは私の血を操れ、逆に私はカンナの血を操れる。これはいわば私達2人による結界だな。」


 そう俺とローズの血は先程のでさらに濃く混じった。そのため今まで出来なかった、互いの血を操ることができるようになったのだ。


 説明しているうちに侵食が終わった。


「さてこのダンジョンの侵食も終わったし、反撃を開始するとしますか!」


 そう言うとローズと共に武器を構えた。そして、


「詠え!『星詠い』!」


「輝け!『フローライト』!」


 それぞれの武器を解放させ、反撃が始まった。


 ――その後


 俺らは最後のボスを倒し、ダンジョンをクリアした。


 だがダンジョン全体を侵食した影響か未だ出れずにいた。


「なぁローズ、あいつ倒すためにダンジョン全体を侵食したけどよ。ここのシステム的なものも侵食してたらやばいじゃねぇの?」


 思ったことをローズに聞いてみた。


「だがあれをやらねば勝てなかったのも事実だ。まぁ確かにあれをやった時どこまで侵食が行くのか全く考えてなかったな。」


「やべぇじゃん。どうすんの?」


「知らん。」


 そんな会話をしていると、


「現在このダンジョンはお二人のものとなっています。なのでお二人が出ると願えば出れると思います。」


 聞き覚えのある声が聞こえ振り向くと、


「何だ?リベンジしに来たのか?」


 先程倒したボスがいた。


「いえ、私達は現在皆お二人に忠誠を誓っておりますので。」


 はっ?どういうことだ?


「忠誠だと?どういう心変わりだ?」


 ローズが聞くと、


「私達はこのダンジョンに囚われていたのです。それをお二人がダンジョンを侵食したのでこうして出てこれたのです。」


「囚われてた?一体どういうことだ?」


「ここ黄泉がえりのダンジョンは神が娯楽のために作ったものです。」


 俺たちは思いがけないとこからこのダンジョンの真相を知ることとなった。


 黄泉がえりのダンジョン


 神が娯楽のために作ったものであり、クリアすれば生き返れるとなっているが、実際はクリアさせる気のないものらしい。


 俺らが戦った最後のボス、アテナは俺らの前に最後まで行った人らしい。


 だが最後に出てきたボスが俺らと同じで攻撃が一切通らなかったらしい。その後負けたアテナはボスにさせられたられたという。


「という事は何だ?今ここにいる連中はこのダンジョンで死んで、神とやらにボスにさせられて、囚われてたと。」


「そういうことになります。」


「更に私達がダンジョンを侵略して管理者が私たちになった事で解放されたと。」


「はいそうです。ローズ様。」


「それよりも俺らは生き返れんのか?一応それを目標にしてたし。」


 とりあえずの目標である生き返りのことについて聞いてみると、


「多分それについては大丈夫だと思います。元の管理者は一応クリアされた時のために生き返れるようにしていたみたいですので。」


「なら大丈夫だな。」


 そう言ってすぐに実施しようとすると、


「その前にお二人にお願いがあります。」


 アテナから待ったがかかった。


「ん?なんだお願いって?」


「私を含めてここにいるもの全てをお二人の配下にさせて貰えないでしょうか?」


「どういうことだ?」


「ここにいるものはあなた方がに倒され、忠誠を誓うと決めたものたちです。なのでお二人の行く末を見届けたいのです。神の試練をも乗り越えたお二人の。」


「どうするよ?ローズ。」


 こういったことは俺には全く向いてない。だから魔王をしてたローズに丸投げしたが、


「いいじゃないか。ここにいるものを一通りみたが色々と役に立ちそうだぞ。」


「いや、お前がいいって言うならいいけど。この数は連れ歩けないぞ。」


「その点はご安心を。お二人がこのダンジョンの管理者である限り、ここから忠誠を誓ったものだけを呼び出すことが出来ます。」


 懸念点もなくなってしまった。ったく仕方ないか。


「いいぞ。なんなら、迷惑とかかけないのであれば自由にしてていいからな。」


「ありがとうございます!」


 アテナが頭を下げると同時に後ろにいたのも頭を下げた。


「だとすれば自己紹介をしなきゃな。俺はカンナ。後天的だが、魔王だ。」


「私はローズだ。カンナとは違いここに来る前から魔王をやっていた。」


「アテナと申します。格は低いですが神をやっていました。」


 まさかの神だった。


「それと主様方こちらが最後の討伐報酬となります。」


 そう言ってアテナが差し出したのは1冊の本だった。


「これがか?見た感じ魔導書のようだが、全く読めんな。」


「どうやらこの魔導書は適性がないと読めないようでして。」


 2人がその話をしているうちに、魔導書を見ると、


「時空間魔法?なんじゃそりゃ?」


「「えっ!?」」


 なんか2人が驚いてるのだが。えっ?なんかやらかした?読んじゃダメなやつだった?


「カンナ!お前それが読めるのか!?」


 ローズが食い気味に聞いてきた。


「お、おう。読めるけど、それがどうした?」


「驚いた、まさかこんな近くにいるとは。」


「いや、なんだよ?読んじゃまずかったか?」


「いや、その逆だ。お前は確か、魔法の適性が1つしか無かったよな?」


「そうだが。それがどうした?」


「その魔導書は適性がないと読めない代物なんだよ。」


「えっ?マジで?」


「マジだ。この大バカものが。」


 そういったローズの顔は笑っていた。

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2人の魔王の英雄譚 宵桜 @yozakrahisame

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