第3話 黄泉がえりのダンジョン2

 ローズを追ってダンジョンに入ると、そこは平原になっていた。


「へぇ、はじめは平原か。ってかここほんとにダンジョンか?」


 平原の終わりが見えないほどに広がっていた。


「クリアすれば生き返るんだこれくらいしてくるだろう。問題はどれぐらいの広さで、いくつ階層があるかだ。」


「まぁ、時間はあるんだ。死なずにやってこうぜ。」


 ダンジョンの影響なのか、俺達は歳をとっていない。それに急ぐ必要も無いので、確実に攻略する方がいい。


「そうだな。それに、お前がどれだけ戦えるのかも試したいからな。」


 ものすごくいい笑顔で、恐ろしいことを言われた気がする。


「おや?あれは何だ?」


 ローズが何かを見つけたようだ。


「どうした?なんか見つけたのか?」


「そうだな、見つけたというのか、見つけてしまったというのか。」


「歯切れの悪い言い方だな。」


「お前も見れば分かるさ。」


 そう言ってローズが指を指した。


 その方向には、果実が実った木と立て札があった。


「なんだあれ?」


「やっぱりそうなるじゃないか。」


「いやあれに反応するなって方が無理があるわ。」


 なんで平原のど真ん中に、見つけてくださいと言わんばかりに配置されてるのか。


「とりあえずなんか書いてありそうだから見に行くか。」


 そう言って近づくと。立て札には、


 試練

 この木には3つの果実が実っています。あなた方はどれか1つを選んで取る事が出来ます。ただし、1人1個です。


 注意:果実を取った瞬間ボスとの戦闘になります。


 と書いてあった。


「カンナ鑑定できるか?」


「おう、出来るぞ。した方がいいか?」


「頼んだ。」


「頼まれた。」


 そして、果実に鑑定をすると、


「ぶっ!」


 俺はあまりの結果に吹き出した。


「どうした?そんなにヤバいものだったのか?」


「ヤバいってレベルじゃねぇよ。知恵の実に、不老不死の果実、星樹せいじゅの果実だぞ?」


「はぁ!?」


 知恵の実:食べればこの世の全ての知識が手に入る。


 不老不死の果実:文字通り食べれば不老不死になる。


 星樹の果実:死んでいなければ全ての負傷を直し、かつ潜在能力を大幅に上げる。


「マジでどうなってんだここ?」


「わからん。それより、どれを取る?」


「そうだなぁ、まず不老不死の果実は無しだろ。」


「私達が吸血鬼である以上、寿命なんてないに等しいからな。」


「正直知恵の実もいらないよな。」


「そうか?私は興味があるぞ。」


「いや、ここで知識を手に入れたところで使いどころがないだろ。それにこの世の全ての知識なんぞ生物の脳には処理しきれないだろ。」


「言われてみればそうだな。だったら星樹の果実か?」


「まぁそうなるだろうな。」


 そう言って、俺達は星樹の果実を取った。


 ここで1つ補足を入れると、これらの果実には通常は鑑定は効果がない。鑑定をしようとしても弾かれてしまう。


 では何故、カンナの鑑定は弾かれなかったのか?


 これまで勇者パーティーを支えてきた、経験値に加え魔王となったことで、既に所持していたスキルが大幅に強化されているからである。


「この後のボスが試練になるのか?」


 否、果実を選ぶことから始まっている。本来見た目で選ぶ必要があるのを、常識外れとなったスキルのせいで簡単になってるだけである。


「多分そうだろうな。でなければわざわざ注意書きなどしないだろう。」


「それもそうだな。」


 そんな事を話していると、周囲の風景が変わり始めた。


 草は枯れ、先程まで果実が実っていた木はかれ始めていた。


 そして、地平から巨大な影が向かってきていた。


「ヨルムンガンドだと?そんなものがいるのか。」


「待て待て!まだ序盤だぞ?なんでそんなもんが出てくんだよ!?」


「クリアすれば生き返るとかふざけた事を、言っていたんだ。これくらいはするだろう。」


「はぁ、マジかよ。それで倒す手段はあるのか?」


「無い。死ぬ気でやらねば死ぬだけだ。」


「だと思ったよ!」


「そこでだ。ちょうどいい的がある。カンナ、あの魔法を使ってみろ。」


 ローズがいきなり突拍子もないことを言い始めた。


「ちょっと待て!あれは威力が高すぎるから極力使うなって言ってなかった?」


 ローズと修行中に獲得した魔法。だが威力が高すぎるため封印1歩手前までいった代物である。


「別にいいだろう。それでダメだったら本当に持久戦だぞ?それに奴の周りは猛毒で充満してる。その中でお前は戦いたいか?」


「嫌だな。」


 毒が充満してる場所での持久戦とか何の拷問だ?


「はぁ、どうなっても知らないからな。」


 そう言って、俺は片方の掌に魔力を、もう片方に霊力を集め始めた。


 本来これらを同時に操ることは不可能だが、何故か俺には出来た。原理は分からないが、少ない魔力を補うために使用していた、霊力が知らない内に俺の身体に影響を与えていたらしい。


 そして、魔力と霊力が臨界点を迎えバチバチといい始めたタイミングで、2つを合わせた。


 合わさった球体が、銀色の光を放っている。


 俺はそれを正面の巨体に撃ち込んだ。


『アルスノヴァ』


 巨体に触れた瞬間、音が消えた。それからヨルムンガンドの巨体を飲み込むほどの爆発が起きた。


 爆発が収まったあと、そこにヨルムンガンドの姿は無かった。


 ヨルムンガンドの討伐を確認しました。報酬として世界蛇のブーツが贈られます。


 頭に響くアナウンスがなった。


「あれほどの巨体を消し飛ばすか。これは使えんな。」


「なんか申し訳なるな。」


「そうだな。もしもこれを生き返った時に使えば大陸が消えかねん。封印だな。」


「まぁそうなるだろうな。こんなん使ったら世界がいくつあっても足りねぇよ。」


 こうして無事?に1回目のボス戦を終えた――


 はずだった。


 これよりウロボロスの召喚を行います。攻略者は戦いの準備を。


 再度頭にアナウンスが響いた。


「は?2戦目かよ。まさかずっとボスと戦うのか?」


「そのまさかだろうな。本当に持久戦をするとは、私でも思わなかったぞ。」


「その割には嬉しそうだな。」


 ローズは笑っていた。


「当たり前だ。今まで試せなかったことができるんだぞ?嬉しくないわけが無い。」


「わかったわかった。じゃあ交代しながらやるか?危うかったら助けるってことで。」


「それでいいだろう。」


 こうして、長い持久戦が始まった。

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