第2話 黄泉がえりのダンジョン1
光の奔流によって消えたと思っていると、大きな樹の下で眠っていた。
「ここはどこだ?それに俺、死んだはずじゃ?」
「ようやく目が覚めたか。随分と眠っていたな。」
声が聞こえた方を振り向くと、魔王がいた。
「なっ!お前死んだはずじゃ!」
「死んだわ。貴様のせいでな!」
「だったらなんで生きてんだよ!」
「それは貴様もだろう?」
魔王と言い争いをしていると、
『ようこそ、黄泉がえりのダンジョンへ』
急に頭の中に声が響いた。
「なんだ?頭の中に声が?」
いきなりのことに戸惑っていると、
「黄泉がえりのダンジョンだと!?存在しないはずでは!」
魔王が取り乱していた。
「なんだそれ?知ってるのか?」
「知ってるも何も、噂でしか出てこないから存在しないとまで言われたダンジョンだ。」
「へぇーそんなものが。」
そんなことを話いると再び頭の中に声が響いた。
『あなた達、魔王には黄泉がえりのチャンスが与えられました。このダンジョンをクリアすることが出来れば、生き返ることが出来ます。その際、このダンジョンで手に入れたものはそのままになります。それでは頑張ってください。』
「待て!魔王が2人だって?俺は魔王じゃないぞ!」
「落ち着け!ステータスを見ればわかることだろ!
」
「そうか。すまん取り乱した。」
そういうと俺は自分のステータスを開いた。するとそこには、
名前:カンナ
Lv:20
種族:吸血鬼
職業:魔王
種族と職業が変わっていた。
「おい、俺の種族と職業変わってるぞ。どういうことだ!」
それを聞いた魔王は、
「おそらく死ぬ前に私ごと剣で貫いただろ?その際に私の血が混じった結果ではないか?」
「それだけで変わるもんなのか?」
「あぁ、これが普通の吸血鬼なら問題はないだろう。だが私は魔王にまで上りつめた存在だ。それくらいの影響があっても有り得なくはないだろう。それに私の方も貴様の血が混じった影響か出ている。どうやら、吸血鬼特有の弱点が無くなった上に、光属性が効かなくなったようだ。」
「なんだ?つまり、魔王のお前の血が混じった結果、俺の種族が吸血鬼になった上に魔王になったと。」
「そうだ。まぁ、貴様の場合は吸血鬼の特性だけ引き継いたみたいだがな。」
そう言われて、近くの水場で確認すると、髪が銀髪にはなり、瞳が血のように紅くなっていた。
「それよりも問題はこのダンジョンだ。こんなものが存在しているなら、何人かクリアした者がいるはずだが、そんなことは聞いたことがない。ダンジョンの難易度が馬鹿みたいに高いか、生き返れなかったの2つだが、現段階では検討もつかん。」
「それを確かめるにはクリアするしかない、かぁ。」
多分俺1人では無理だろう。ちょっと前まで敵だったが、協力するしかない。
「なぁ、さっきまでは互いに敵だったけどさ、協力しないか?」
「は?何を言ってるんだ貴様。頭でも打ったか?」
何故か可哀想なものを見る目で見られた。
「打ってねぇわ!ただ、個人で動くよりも協力した方がいいと思っただけだ。」
「ふむ、確かに一理あるな。」
魔王はしばらく考えた後。
「いいだろう。それに良く考えれば貴様が敵対する理由もないしな。」
「ん?どういう意味だ?」
「貴様はもう人ではなく魔族だからな。それも私と同じ魔王だ。」
そうだった。俺もう人ではないんだった。
「ったく、最初からお前と一緒に行くしかなかったってことかよ。」
「さて、そうと決まればやらねばならぬことがあるな。」
「?何をやるんだ?」
このダンジョンをクリアする以外にやることなどあるのか?
「これから貴様を私と同レベルまで鍛える。」
「今からか?」
「もちろん。今の貴様ではすぐやられてしまうからな。」
確かに否定できない。今まで正面切って戦うことはなかった。
「カンナだ。これからどれだけ一緒にいるか分からないがよろしく頼む。」
していなかった自己紹介をし、手を差し出す。
「ローズだ。精々死んでくれるなよ、カンナ。」
こうして二人の魔王が生き返りをかけたダンジョン攻略が始まった。
「早速だが、カンナには吸血鬼の特性を利用した戦い方を覚えてもらう。」
「いきなりかよ。それで何するんだ?」
「なに、私と戦ってもらうだけだ。」
――そこから、俺にとっての地獄が始まった。
ローズは一切、手加減をせずに攻撃してき、俺はそれを対処するのに精一杯だった。
それを続けること数日、ようやくコツをつかみ始めた。
「ほう、以外に早かったな。私としては数年はかかると思っていたぞ。」
「出来ないとそのうち死にそうだったんでね。だがコツは掴んだ。後はひたすら練習するだけだ。」
「幸いここは時間が止まってるらしいからな。貴様がものにするまで何年でもやるぞ。」
「上等!」
――更に数百年が過ぎた
樹が生えている広場では、2つの白い影が高速で動き回っていた。
それはカンナ達だった。
カンナは手に紅い刀を、ローズは紅いレイピアを手に模擬戦をしていた。
幾回か斬り合いをした所で、急に両者は戦いを辞めた。
「まさか私とここまで渡り合えるようになるとはな。正直驚いた。」
「それはこっちもだよ。最初の頃にボコられてたのが懐かしくなる。」
吸血鬼としての戦い方をマスターしたあとはひたすらローズと模擬戦をしていた。
「これなら、そうそう死ぬことはないだろう。そろそろこのダンジョンを攻略し始めてもいいだろう。」
「さすがに長くいすぎた感があるからな。そろそろ始めないと、うるさいのが出てきそうだ。」
ここ最近は出てきてないが、管理者と思われしき者から何回がメッセージみたいなものが届いてたのだ。
まぁ、全て無視してたんだが。
「私も今出てこられたら、間違えて燃やしてしましそうだ。」
「せめて読んでやれよ・・・」
しばらく見つめ合って、2人揃って吹き出した。
ローズと一緒にいるうちに、いつの間にか親しくなっていた。
「当初の私達からしたらありえない光景だろうな。まさかどちらか居ないと落ち着かなくなるなんて。」
「まぁ一緒にいることが当たり前だったからなぁ。今では声に出さなくても考えてることが分かるようになったし。」
「まさに夫婦だな。」
「おいおい、俺らまだ付き合ってすらないぞ?」
いきなりとんでもないことを言い出したローズに、驚いてよく分からないことを言った。
「これだけ長い間一緒にいるんだ。それにお前ならいいと思ってからな。」
そう言ったローズの目は真剣だった。
「お前は、カンナはどうなんだ?」
誘うといかけられて、戸惑った。確かにローズが居ないと落ち着かなくなるが、本当にそれだけなのか?当たり前だと思っていたが、それが違ってローズ画好きになっていたら?よくよく考えて見ると、確かにそう思えることは度々あった。
俺は、ローズが好き、なのか。
だとしたら話は早い。もはや離れる理由もないのだ。
「俺もそう思った。なぁローズ。ここをクリアして、生き返れたら一緒に旅しないか?」
気づくとそんな事を口に出していた。
「いいだろう。もしここを出れたなら夫婦の契りでも結ぶか?」
ローズは微笑みながらそう言った。
「出れたならな。」
今はそれしか言う事が出来なかった。
「ならば早く出るとしよう。私はあまり待てる質ではないのだからな。」
「ちょっ、待てよ!」
上機嫌に走ったローズを追いかけて、ようやくダンジョンへと入った。
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