時の水

@kawata0723

第1話

ミンミンとセミが鳴く中、ある少年・高本 樹は、夏期講習があるため、塾へ歩いていた。


「あ〜。もうなんでこんなに暑いんだよ!」と樹は呟いた。

「そういえば、前ひいおばあちゃんちゃんが、河内洞の水たまりについて教えてくれたな。

あれなんだったけな。」心の中で考えながら、塾へ向かって歩いていた。



塾が終わり、

「まだ時間あるし、河内洞の水たまり見に行くか〜。まぁ洞窟なら涼しいし、水溜まりだったら、ワンチャン泳げるな!?」と樹は、友人の寛太に言った。

寛太は「いやー、俺この後おばあちゃんの家いくんだ。ごめんな。」と言った。


「おいー!なんだよー。ノリ悪いなー。まぁいいや、一人で行くわ!また今度行こうなー。」と寛太に言い残して、樹はスマホを取り出して、河内洞へ向かった。


「あ〜。やっと着いた。意外と遠いな、、。でもやっぱり洞窟なだけあって涼しいなー。毎日通おう!」と樹は、張り切って洞窟の奥へと進んで行った。


数分して、樹は、お目当ての水溜まりに着いた。人は樹以外ないので、裸になって水溜まりに飛び込んだ。

「プハァー!やっぱり気持ちいいー!」と樹は首だけを出して叫んだ。

その時、樹は、自分が河内洞ではないところにいると気づいた。

「やばい。どこだここ。とりあえず母さんに電話しよう。」とスマホを取り出すと、スマホは圏外になっていて繋がらなかった。


「本当にどうしよう。とりあえず、出れるところを探そう。」樹は半泣きになりながら、出口を探した。

数分して、光が見えた。

「やった。やっと家に帰れる。」と樹は安堵して、光に向かって走った。


樹は、光が出ている穴を広げて外へ出ようとした。

ようやく人が出られるほどの穴になった時、外の景色を見て樹は腰を抜かした。

そこは自分が知っている町ではなかった。

そこはまるで、戦争映画のような焼け野原だった。


樹は焦りながらも、とりあえず家を探そうと、洞窟から出て、歩き回った。


歩いていると、バーン!と激しい爆発音聞こえた。樹は何が起きたか理解出来ず、怖くなり泣きじゃくった。

しばらくその場で立ちつくしていると、人が近づいてきた、「やばい、殺される。」と思った。


しかし近づいてきた男性は樹に対して「ここは君が来るような場所ではない。今すぐここから逃げるんだ。」と言った。

樹はどこに逃げればいいのか分からなかったが、がむしゃらに走った。

しばらくして、さっき出てきた洞窟にたどり着いた。

「元に戻るにはもう一度ここに入るしかない。」と思い、急いで洞窟の奥へ行き、さっきでてきた水溜まりに潜った。


そして顔を上げると、そこは河内洞に戻っていた。

「あぁ、やっと帰って来られたんだ。」樹は安心した気持ちを持ちながら、河内洞を出て、家へ向かった。

樹はこの不思議な体験を色々な人にして回った。しかし、信じてもらえる人は誰もいなかった。あれは夢だったんだ。と思い込むようにした。


あれから数年後、世界で大戦争が起こった。

世界中を巻き込む戦争だ。樹は兵士として、アフリカへ行っていた。

戦争中、不思議な事が再び起こった。見覚えのある地で歩いていると、高校生くらいの少年が歩いてきた。「高校生は徴兵されていないはずだが?」と不思議に思いながら、歩いて行くと、そこには過去の自分がいた。全てが繋がった。

あの日、自分は未来にいたのだ。


少年に「ここは君が来るような場所ではない。今すぐここから逃げるんだ。」と伝えた。そしてもうひとつ「世界中を巻き込んだ戦争が起こる。これを止めるんだ。」と伝え、少年を帰らせた。


少年が帰った数分後自分は消えた。過去が変わり、未来も変わったのだ。


世界の平和か自分の命。どちらが大切だったのか。誰にも分からない。

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