最終話
「俺は、カイジが一番いいと思うんだ。コンフィデンスマンは一応対抗馬として出しただけで、とくに意味はない。まあ、要は個人的にカイジが好きなんだけどさ。柚原さんはどう思う?」
「カイジ、おもしろくなりそうだなって思うよ。」
「じゃあ、俺たち二人としては、カイジが一番いいってことでいい?」
「うん。」
「じゃあ早速ストーリー考えていこうぜ。他の奴らがいない間にめっちゃいいの作ってびっくりさせてやる。」
「ええ! 今から作るの?」
「ダメ?」
「いや、ダメじゃないけど、想定してなかったから、ちょっとびっくりしたっていうか。」
「そうか。すまんな。」
「ううん、全然。」
謝らせちゃった……。ごめんね。
「今俺の中でイメージとしてあるのは、トランプゲームとかの簡単なゲームをいくつかやって、最後にデスゲームをやって、主人公のカイジだけ生き残る、みたいな。結局そのままだけど、ゲームの内容を俺らで考えるならオマージュとしてはオッケーだと思ってて。」
「いいじゃん!」
「柚原さん、思ったことあったらどんどん言ってね。俺は思いついたことを適当に話してるだけだから。」
相河くんは本気で申し訳なさそうにしていた。声色で、そういうのは何となくわかる。
「わかった。じゃあ早速だけど、トランプゲームって舞台でやってることがお客さんに見えづらいんじゃないかな。」
「そっか、なるほど。台詞で全部言う?」
「説明っぽくなりすぎちゃうと良くないからなぁ。スクリーンとか使っていいなら、手元だけ別で映して見せれるんじゃない?」
「すっご。機材のことは俺が実行委員に聞いておくわ。あ、今日この後予定とかある?」
電話の向こう側から、たどたどしいワルツの音色が聞こえ始めた。私とは違って、でもそっくりな部分もあるように思える。
「うわ、ごめん。」
バタバタと足音がして、かき消されてしまうワルツ。
言葉が勝手に脳内再生される。脚本班、入ってよかったな。相河くんと話せてよかったな。
心臓がとくんと鳴いた。
夏風のワルツ 紫田 夏来 @Natsuki_Shida
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