最終話
「今から俺らで指針を決めていくわけなんだけど、なんか良いアイデアない? ほんとはさ、俺こういうの苦手なんだよ。盛り上がるのは好きなんだけど、だからどんどん関わっていくけど、作文とか無理なんだって。」
「私だったら、中学生の子が明るくなれる話にしたいかな。」
「明るくなれる話?」
「文化祭に来て、うちらの劇がこの高校に入りたいって思う力になるような感じ。在校生も楽しめるようにしたいから、やっぱり最後はハッピーにして、みんなが共感できて、わざわざ来てくれる中学生にはほんのちょっとでもお祭りを楽しんでほしいかな。」
「じゃあ、コメディってこと?」
「それも、無しではないんじゃない?」
「じゃあ早速ストーリー考えていこうぜ。他の奴らがいない間にめっちゃいいの作ってびっくりさせてやる。」
「ええ! 今から?」
「ダメ?」
「いや、ダメじゃないけど、ちょっとびっくりしたっていうか。」
「そうか。すまんな。」
「ううん、全然。」
謝らせちゃった……。ごめんね。
「柚原さん、思ったことあったらどんどん言ってね。俺は思いついたことを適当に話してるだけだから。」
国崎くんは本気で申し訳なさそうにしていた。声色で、そういうのは何となくわかる。
「わかった。じゃあ……何でもできる子たちばっかりの学校で、一人がなんか失敗をしちゃって、それを面白おかしく書いて、最後は感動的にできたら、良さそうかなって、今思ったんだけど……どうかな。」
「すっげえ柚原さん、最高だよ! 中田がいればな、一気に書き上がりそうなんだけどな。あ、今日この後予定ある? 早く練習に移りたいからさ、今日俺らにできる範囲でやってこうぜ。」
電話の向こう側で、たどたどしいメロディが響き始めた。私とは違って、でもそっくりな部分もあるように思える。
「うわ、ごめん。」
バタバタと足音がして、かき消されてしまうワルツ。
旋律が勝手に脳内再生される。
「脚本班!」に入ってよかった。国崎くんと話せてよかった。
トクンと、心音が胸に響いた。
夏風のワルツ 紫田 夏来 @Natsuki_Shida
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