女盗賊と
僕たち「竜の翼」の今日の討伐目標はサイクロプスだ。ひとつ目の巨人で危険な魔物である。住処の岩山から人里に降りてきた個体が発見され早急に対処が必要だという。
朝一番に僕の転移魔法でサイクロプスが現れた村にやってきた竜の翼。早速、女盗賊が足跡を追ってサイクロプスを追跡する。
村からほど近い林で休んでいたサイクロプスを発見した。まずは女盗賊が奇襲をかける。背後から無音で忍び寄り、サイクロプスの大きな目に液体をぶっかけた。唐辛子入りの目潰しである。
叫びをあげ、棍棒を振り回し暴れ始めるサイクロプス。だが、一瞬の内に離脱した女盗賊に当たりはしない。
魔法使いが呪文を詠唱し、大きな火球がサイクロプスに襲いかかる。炎に包まれたサイクロプスが地面を転げ回る。
そこにバトルアックスを構えた戦士が飛び込んだ。すでに僕がかけていた膂力を向上させる支援魔法で、パワーアップした戦士が斧を振り降ろし、サイクロプスの脳天を叩き割った。
戦いはそれで終了した。危なげなく完封である。村人にサイクロプスを退治したことを告げて安心させ、王都の冒険者ギルドに転移魔法で帰還し、討伐完了を報告する。
午前中で仕事が終わってしまった。
「竜の翼は、B級最強で間違いないですね。この調子ならA級昇格も遠くないですね」
ギルドの受付嬢さんが褒めてくれる。僕たちは早めの昼食をとりに大通りにあるカフェに向かった。
「女盗賊の奇襲が成功してよかったな」
戦士が女盗賊を褒める。
「ううん、私より、魔法使いの火炎魔法の威力が凄かったよ。また威力が上がったんじゃない?」
「いえいえ、とどめを刺したのは戦士ですよ」
そんな話をしながらカフェの席に着き、皆で食事を摂った。
「午後はどうする?」
「私、ちょっと買い物したい」
「俺も付き合おうか? 荷物持ちならするぞ」
「ううん。女の子の買い物だから戦士は遠慮して。賢者、女同士で付き合ってよ」
僕は体は男だが、心は女。パーティメンバーにはそのことはカミングアウトしている。女盗賊は特に、僕のことを女扱いしてくれる。ありがたいことだ。
カフェで解散して、僕と女盗賊は連れ立って歩く。
「何を買いに行くの?」
「新しい下着。賢者も買うでしょ?」
僕は、体は男なので、一人で女性用下着の店に入るのははばかられる。けれど、女盗賊が一緒なら、彼氏のふりをして店に入るのも不自然ではない。
僕は胸は膨らんでいないが、気分的にブラジャーを着けている。セクシーかつ可愛いものが好みだ。
僕と女盗賊はランジェリー店に入ると、新作の下着を物色し始めたが、女盗賊がおもむろに話しかけてきた。
「ねえ、賢者。豊胸手術ってどう思う?」
「ああ、最近開発された、スライムを胸に注入して大きくするってやつ? 僕も興味あるけど、異物を、それも魔物の素材を体内に注入するのはちょっと怖いね。まだ実績も少ないようだし」
「そうだよね、ちょっと怖いよね。あーあ、もうこれ以上、胸大きくならないのかな」
「女盗賊は、何で胸を大きくしたいの?」
「だって、男の人って、胸が大きい方が好きでしょ?」
「そんなことはないよ。小さなおっぱいが好きな男もいるよ」
戦士とかね。君の身近にいるんだ。
「魔法使いはどうなのかな」
「彼は女の子を見た目で判断するような男じゃないよ」
女の子を見た目で判断するのは戦士だ。君のロリボディは彼の性癖にドンピシャだ。
「そうだよね。魔法使いは硬派だもんね」
硬派とはちょっと違うんだけど、魔法使いがホモセクシャルなのは本人の希望で今は秘密だ。
「魔法使いの好みの女って、どんなのだろう?」
魔法使いに女の好みはない。
「あまりべたべたしない方がいいかもね」
女盗賊が魔法使いにべたべたすると、戦士が嫉妬するだろう。脈はないので嫉妬する必要は全然ないのだが。
パーティの安定のためには方便も必要だ。
僕と女盗賊は下着を購入して店を出た。僕の分は、女盗賊とサイズが違うが、彼女の友達の分という名目である。
「ありがとう、女盗賊。良い買い物ができたよ」
「うん、じゃあ、また明日ね」
面倒な三角関係になってるパーティで賢者の僕の考察 前木 @maeki
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