面倒な三角関係になってるパーティで賢者の僕の考察

前木

三角関係

 B級冒険者パーティ「竜の翼」


 僕たち4人は結成以来、順調に実績を重ねてきた。今ではA級への昇格目前と噂される実力派のパーティだ。


 戦士、女盗賊、魔法使い、そして賢者である僕。メンバーのバランスもよく、今日も何の問題もなく魔物の討伐依頼を達成し、街に戻ってきたところだ。


 戦力は充実している。金回りもよく、装備も良いものを使っている。僕たち4人に死角はない。


 と誰もが思っているが、僕は悩んでいる。


 それはパーティメンバー間の人間関係のことだ。


 メンバー間の恋愛問題だ。


 これを放っておいては真の意味で、冒険者のトップクラスといえるA級への昇格はかなわない。人間関係の綻びからパーティが瓦解してしまう恐れがある。


 僕は今、問題を整理し、解決策を模索するため、ノートに自分の考えを書き出している。この文章は他人には見せられない。パーティメンバーにも相談はできない。彼らは当事者だから。


 とりあえず、メンバーの特徴を列記してみよう。


 戦士。強面のマッチョ。ロリコンだ。


 女盗賊。合法ロリとでも言うべき、薄い胸と小さなお尻を持つ童顔の女。知的で耽美系のイケメン男性を好む。


 魔法使い。高い知能と甘いマスクを持ったイケメンだ。だが、男色家だ。マッチョな男を好む。


 3人の性癖の結果として、三角関係が発生した。


 ロリコンの戦士は合法ロリの女盗賊が好きだ。


 女盗賊はイケメンの魔法使いが好きである。


 魔法使いはマッチョの戦士に抱かれたいと思っている。


 一般的に三角関係といえば、一人の女を二人の男が取り合うような構図が多いが、我がパーティ内では、ある意味綺麗な三角形を形成している。


 まったく、なんでこんなことになったのだろう。


 いや落ち着け。僕は賢者だ。悟りを開いてるんだぞ。この程度の問題で取り乱していてはいけない。


 何が最も悪いのか、どこから問題を修整していくのが容易なのか、冷静に考えるんだ。


 まず、女盗賊は悪くないだろう。優男のイケメンを好むというのは性癖としては至ってノーマルだ。顔と体型がロリロリなのは遺伝か何かによるものだろうから、彼女に罪はない。


 次に戦士だ。マッチョになるのは職業柄仕方がない。強面なのも本人の責任ではないだろう。ロリコンなのは残念だが、彼は実際に幼女に手を出したりはしていない。女盗賊は見た目はロリロリだが成人している合法ロリだ。戦士は法を犯しているわけではない。


 魔法使いはホモセクシャルだ。だが、僕はLGBTにも理解がある。LGBTは生まれつきの脳の状態によるものがほとんどで、本人の意思でどうかなるものではない。魔法使いは、体は男、心も男で、男が好きというタイプだ。マッチョ好きなのも、女性にもマッチョ好きは少なくないことから、特別責められるようなことではないだろう。


 うむ、誰も悪くない。


 個人の性癖を責めるのは不毛だからやめよう。


 だいたい、彼らの性癖を無理に修整しても、問題は解決しないのだ。


 例えば、女盗賊の好みを変えて、マッチョ男も受け入れられるようにしたとする。


 その場合、戦士と女盗賊はくっつくかもしれない。しかしそうなった場合、魔法使いは失恋してしまう。


 この構造は、誰の性癖を修整しても同じだ。失恋はメンバーのモチベーションを下げ、パーティの戦力を低下させてしまう。A級昇格を控えたこの時期に、それは避けたい。


 それにイケメン優男好きをマッチョ好きに変えるのはまだ可能かもしれないが、戦士をホモセクシャルに変えるのや、魔法使いを女好きのロリコンに変えるのは無理だろう。


 最も望ましいのは、3人がそれぞれ、パーティ外で各々の性癖を満足させるパートナーを見つけることだ。


 それも、誰かが失恋しないように、できる限り同時にである。


 マッチョOKな合法ロリの女性と、ロリOKのイケメン優男と、男性を抱けるマッチョ男性を見付け出すのだ。


 難易度は高いかもしれないが、僕ならできるはずだ。僕には神に与えられたユニークスキル「鑑定」がある。


 人の性癖と好感度を鑑定できるのだ。この力でパーティメンバーの性癖を知って、こうして解決策を検討しているのである。


 転移魔法で世界を飛び回って、ロリ女性とイケメンとマッチョを見つけては鑑定していけば、目的の性癖を持った人物が見つかるはずだ。


 そして皆揃ってA級冒険者に昇格したら、この世界のどこかにあるという、性転換魔法を探しに行くのだ。


 僕は、体は男、心は女、好きなのは男でショタコンだ。


 体が女になったら、合法ショタの男子を見つけて結婚するんだ。


 そして皆で幸せになるぞ。


 

 


 

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