試食女

映木

第1話試食女

斉藤裕二は、スーパーマーケットで

警備員をしている。48歳の男性。

このスーパーの、警備員になって

まだ、半年ほどである。


今日も、忙しいく、スーパーは、満員

だった。そしてお昼過ぎぐらいに

いつもの、あの女がくる。


その女は、太って、髪は、汚らしく

長い。季節に、関係なく素足に

サンダルだった。まだ三十代ぐらいの

の女。スーパーの試食を、むさぼり

食べる。スーパーの中では、試食女と

呼ばれていた。


スーパーの、店長は、放っておけば

よいと、言ったが、斉藤は、ついに

我慢できずに、注意した。


「 ちょっと!あなた、何をしているん

だ。その試食は、みんなが、食べる

ものだ。あんただけの、もんじゃない

いい加減しろ。」


斉藤は、かなり強い口調で、言った。

すると、その試食女は、何も言わずに

出て行った。二度と来るな!

斉藤は、そう思った。

それから 試食女は、来なくなった。

よかったと、思ったのは、一週間ぐらい

で、とんでもない事が、おきる。


斉藤が、スーパーから、帰宅しようと

した時。「えー!何だよこれ」

斉藤が、通勤で、使っている

スクーターの、シートがズタズタに

刃物で、切り裂かれていた。

「あの、試食女の仕業だ!」

斉藤は、叫んだ。


それから、所属している警備会社から

呼び出しの、電話があった。

怒ったような、口調だった。

嫌な、予感がした。


事務所に、入ると、部長が、怖い顔で


「 そこに!座れ。お前に、聞きたい

事が、ある。」

かなり、怒っているようだ。


「お前、パートの小島さんとは

どんな関係だ。答えろ。」


小島さんとは、スーパーの、レジ担当

の女性。50歳の人妻。斉藤は、この女性と、交際していた。


「 どうして、知っているのですか?」

斉藤は、聞いた。すると部長は


「やっぱり!交際しているのか!

このバカ野郎!相手は、人妻だぞ」

部長は、怒鳴った。


「 お前は、今日かぎり、解雇だ。」

クビを、宣告された。


斉藤は、「 わかりました。ご迷惑を

おかけしました。」

斉藤は、承知した。


「でも、なぜ?わかったのですか?」

斉藤は、不思議だった。


「密告電話が、あったんだよ。会社に

それで、お前を呼び出した。」

部長は、不機嫌そうに、喋った。

斉藤は、会社を、出た。

あの試食女だ。店長の言う通り

放っておけばよかった!

斉藤は、後悔した。


会社は、クビになり、小島さんとも

もう会わなくなり。仕事と恋人を

両方なくして、しまった。

斉藤は、落ち込んだ。

でも、ちょっとおかしいな!


よく考えてみたら、試食女が

スーパーの作業員置き場にある、俺の

スクーターなんて、知っているわけ

ない。それに、作業員置き場に部外者

は、入れない。小島さんとの事も

知っているわけないじゃないか

斉藤は、そう思った。


斉藤は、警備会社に、電話して

聞いてみた。


「 会社に、電話してきたのは

女ですか?」


「いや、まだ若そうな

男性の、声でしたよ。」

警備会社の、受け付けの女性が、教えて

くれた。


やはり、試食女じゃない!

小島さんの、夫なら、俺を、訴えるだろ

それに、小島さんの、夫は、若くない

小島さんより、年上だ。


じゃあ、誰が?

斉藤は、わからなかった。

「 スーパーに、行ってみるか。」

斉藤は、スーパーに、向かった。


スーパーに、入った斉藤に、パートの

西村さんが、声をかけてきた。


「 あら、斉藤さん!元気?その後

どうしているのか?心配してたのよ」

西村さんは、四十代ぐらいの、女性。

小島さんと、仲が良かった。


「 西村さんは、俺と小島さんの事

知っていたの?」

斉藤は、訪ねた。


「 知っていたわよ。みんなで、飲みに

行った時、小島さんが、自慢気に

あなたとの事を、喋っていたわ。」

西村は、呆れた感じで、斉藤に言った。


「 みんな?誰がいたんですか?」


「私と、小島さん、横井さん、

大東さん。いつもの女子会の

メンバーよ。」


「 そうだ!あの日は、ベーカリーの

中村さんが、いたわ」


ベーカリーの、中村!なぜ?

中村は、まだ、三十代の男。


「 中村さんが、なぜ年上の女性

ばかりの、女子会に、行くの?

誰が、誘ったの?」

斉藤は、驚きながら、聞いた。


「 大東さんよ、中村さん、小島さんに

気があるみたい。それで、同じ

ベーカリーの、大東さんに、頼んだ

みたいね。何も知らずに。」


中村だ!全部あいつの仕業だ。

「 中村は、今日来ているの?」


「辞めたわよ。」


「え!」

斉藤は、店長の所行って、中村の家の

住所を聞き出した。


スーパーの近くの、マンションだった

母親と、住んでいるらしい。

チャイムを、鳴らした。

「はい。」

母親が、出てきた。


「私は、斉藤と申します。中村くんは

居ますか?」


「今は、出てます。もうすぐ帰ると

思いますが。」

母親は、そう答えた。


「外で、待たせてもらいます。

お二人で、お暮らしですか?」

聞きたくもないが、話の流れで、聞いた


「いえ、三人です。」

三人?


「あ、ゆう子、お帰り。」

母親が、言ったので、斉藤は

振り返った。


「わぁー」斉藤は、思わず大声出した。

試食女がいた。
















  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

試食女 映木 @teruki01

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ