セッション3 『揺れる戦場』
第0話 プロローグ 招待状
「どうして僕の所に
オペラハウスに動揺しきった声が響いた。招待状を手に秘密基地に飛び込んだ
「なるほど事情は理解できたよ」
招待状をホログラムに投影してルルは言った。東京湾タワーの横をクルージングする優雅な客船の映像を見て頷くルル。こっちはこれが今朝届いてからずっと生きた心地もしてないっていうのに暢気なものだ。
「送り主は
「むしろ納得だよ。前回Xomeから脱出後の隠蔽工作を覚えているだろ」
「あ、ああ」
前回セッションの最後を思い出す。僕たちのデータが敵に見つかる直前に、財団と軍団の共同プロジェクトが取り下げられ辛くも発見を逃れた。
「あの時プロジェクトを取り下げたのは葛城早馬だったということだよ」
「はっ? 葛城早馬は敵の幹部だぞ。なんでわざわざそんなことをする。だってそれって……」
言いながら頭が整理されてくる。財団の拠点に潜入した僕たちの情報を、その財団の幹部が握りつぶす。そんなことは通常はあり得ない。だからもしそんなことが起こるとしたら……。
「つまり葛城早馬は僕たちの情報をシンジケートに対して隠蔽した。いやそうじゃないな、自らが情報を“独占”したってことか……」
「いつもの調子が出てきたみたいだね。そういうことだろうね」
「“僕”を
これが素なんだ、迫真の凡人ロールプレイをしてるわけじゃない。僕はため息をついた。こういうのを不幸中の幸いというべきなのだろうか。いや、不幸中の不幸だ。
学会であったいけ好かない優男の顔を思い浮かべる。あのエリートから感じたのはまさにその地位にふさわしい高慢さと、そして目的達成への意志だ。
「この招待状は葛城早馬個人による僕たちへのアプローチ、おそらく情報収集を目的にした、ってことか」
「ソウマは二度も君の活躍を見ている。彼に見えたのがスキルから漏れたDPだけだとしても、その力がどれほどかは推定できる」
奴の狙いはルールブックの情報だ。正確にはルールブックを実現しているニューロトリオンの情報と言うべきだろう。現実でTRPGをしたくて仕方ない重度のTRPGジャンキーなんているはずがない。
「それで、ヤスユキはどうするつもりだい、この
「敵にハンドアウトを作られたことを開き直らないでくれ。最悪だろ。逃げ場のない船の中で、こちらの正体を知っている相手だ。前回の
「モデルは伴わないと書いてあるよ。君が嫌いな戦闘はない」
「信用できるわけ……。いや、そうでもないのか。葛城早馬が
「モデルを使えばどうしようとシンジケートにばれる。だからこそ自分が主催する表のイベントを使ったと考えるのが合理的だよ」
考えれば考えるほど
「この『IPオークション』っていうのは何なんだ?」
僕は招待状のタイトルを指さした。
「幸いボクとサヤカの専門だ。ボクは表向きコグニトームリソース投資家として活動しているし、サヤカは生物学や特許にも詳しいからね。安心できるだろう」
「まったくもってだ。つまりこのシナリオの『探索』も相も変わらず超高難易度ということじゃないか」
このRules of the Deeplayerの難易度調整だけは本当に何とかしてほしい。敵がシナリオを作っている時点で言っても無駄だが。
「高峰さんにも確認しなくちゃいけないけど、この
「じゃあ最初にやらなければいけないことは装備の調達だね。そうだね、このイベントの格を考えると、ここなんかどうだい。もちろん
「また東京行きか」
「いっそ都内に引っ越すかい。部屋は用意するよ。タワーマンションのペントハウスでもね」
「勘弁してくれ」
僕は大きくため息をつき
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2023年7月16日:
セッション3を開始します。毎週日曜日に投稿の予定です。
セッション3に関してはこれまで通り力を入れて書いたつもりです、下書きが終わっているのでセッション途中で切れることはないと思います。申し訳ありませんがセッション4については正直全く予定が見えない状況です。
なろう版と合わせるためタイトルに【新版】を付けました。内容はこれまでと一緒です。
それではセッション3をよろしくお願いします。
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