12.鎮火
神々の戦いに黄昏が訪れたのは、それから10分ほど後のことであった。
四肢をもがれた古神兵を易々と持ち上げた国掴神。関節部が軋む程の力で頭部を無理矢理引き千切ると、戦いの趨勢は決した。
「これは報告にあった
あまりに原始的な戦い方と、凄まじい質量の応酬に、理解が追いつかないリュウは、その言葉で我にかえる。
「終わったんですか」
「まだよ、敵パイロットをコアから引き摺り出して尋問します」
「え?パイロットがいるんですか?」
「当然。あなた、銃は使えるわね?」
国掴神が頭部からコアを引き抜き、外壁に穴を開けると、大量の液体と共に、人間が投げ出された。
瓦礫をかき分けた小スペースは途端に水溜りが出来、倒れた人間はピクリとも動かない。
「用心して。後ろから援護なさい」
中尉から制式の小型拳銃を受け取ったリュウは、備え付けの乗降装置で地上まで降下し、ゆっくりと照準を敵兵に合わせながら前進する。
先に降りていた中尉は、既に敵兵とコンタクトを取っているようだが。
「無理ね、息はあるけど一向に口を割らない。怪我もひどいから、いっそトドメを」
そこまで言いかけて、中尉は背後の不穏な雰囲気を察知する。
「どういうつもりかしら。無礼もここまで来ると、反逆罪相当だと思うのだけれど」
反逆罪相当などではない。明確な敵対行為である。
「昼の発言はお詫びします、中尉。ですが、それ以上動かないで頂きたい」
リュウの照準は既に敵兵を捉えておらず、中尉の後頭部に向けられていた。
「基地が壊滅し、上官や同僚を失ったとしても我々は軍人よ。新兵で混乱するのは分かるけど、好き勝手にその場の気分で動かれたら困るの」
「その場の気分ではありません、中尉。そこの死に損ないから、聞き出すことがあるのです」
「なにを聞きたいのかしら。絶対に口は割らないみたいだけど」
中尉はこの状況下でも、落ち着いて探りを入れ続ける。
「例え同胞だとしても、ですか?」
「あなた、何を言っているの?」
その時、倒れている敵兵が口を開いた。
「貴様が例の潜入将校か!」
リュウは苦々しい顔をして答える。
「ああ、陸軍諜報部のリュウだ」
「この陸軍の愚図が!なぜ戦闘中にその女を撃ち殺さなかった!?」
リュウにとってこの反応は想定の範囲内だ。利敵行為を問われるのは当然である。だが、リュウにはそれよりも知りたいことがあった。
「まだ喋る元気はあるようだな。よし、作戦の全てを話せ。息のあるうちにだ」
リュウは拳銃の柄で手早く中尉を気絶させると、更に語気を強めて、敗残の同胞に詰め寄っていった。
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