第二話 謎の男

昨日はあの後、路肩の近くで野宿した。

もうあんなチンピラに絡まれるのはごめんだ。


「おい、そこの少年」

「はい。なんでしょうか?」


仮面をつけた、謎に満ち溢れる男に声を掛けられた。 この男、危険だ。本能がそう叫んでいる。


「おいおい、そんなに警戒しないでくれよ」

「だったらまずは、その仮面を外したらどうだ?」

「失礼だとは思うが、それは出来ない。決まりなんでな」

「なんの決まりだ」

「うーん・・・・・・組織、と言ったとこかな」


組織・・・・・・? まさか、師匠が言っていた?

もしそうなら、これはチャンスだ。

そう、ヴァイスの手掛かりを掴むチャンス。


「へ〜組織ねぇ。ボスはどんな人なんだい?」

「企業秘密、とでも言いたいとこだが・・・・・・実は俺も見たことが無いんだ」


警戒されている気がする。話題を変えよう。


「それで、俺に声を掛けた理由は?」

「ご時世に呑気に野宿していたからさ、気になったんだ。なんで野宿なんか?」

「旅をしているんだ。だから特に宛もないんだ。」

「自己紹介がまだだったな。俺の名前はワン、スカウト担当だ。良かったらウチの組織に来るかい?条件付きだけど」

「そのダサい仮面を付けなくちゃならないのかな?」

「言ってくれるね。でも、そんなもんじゃない。スピネルと手合わせしてもらう」

「手合わせ・・・・・・?」

「弱い奴は組織には要らないからな」

「・・・・・・お願いしよう」


組織の奴といきなり戦闘。運が良いな。

きっと昨日のチンピラとは比にならないほど強いだろう。

スピネルはナイフを取り出し、構える。



「いい構えだ。行くぞ!」


ワンは剣を構え、向かってきた。


(武器は剣か・・・・・・リーチ面では不利だな)


スピネルは横にサッと避けた


「甘いな!」


ワンはそのまま剣を横に振ってきた。


「クッ!」


なんとかナイフで凌いだが、手がヒリヒリする。


「おいおい、そんなもんか?」

(能力を使うしか無いのか・・・・・・?)


そんな事を考えていると、ワンは目の前に接近してきていた。避けられない。


「期待外れだったな。死ね!」

「リターン!」


能力を発動し、ワンの背後に飛ぶ。

そのままナイフを突き刺す。


「やるじゃないか!」


そう言いながらワンは体を捻り、蹴りを出てきた。

スピネルは反応出来ずに吹っ飛んだ。


「おいおい坊ちゃん、油断するんじゃないぜ?」


ワンは余裕そうな発言をしているが、実際は目に見えて分かるほど疲弊している。

深く刺さったナイフが効いているのだろう。


「まさかお前も能力なんてな」

お前〝も〟?

まずい、なにか仕掛けてくる。


「フレイム!」


スピネルの足元から炎が燃え上がる。

(危ない、後ちょっとで当たる所だった)


「良い反応速度だな!」


ワンが接近してきている。剣を見ると、燃えている。またナイフで凌ごうとすれば、確実に殺られるだろう。


「こいつでどうだ!」


スピネルは5本、ナイフを投げる。

(訓練で身に付けた投げナイフの技術・・・・・・通用してくれ!)


「おっと、危ねぇな」


ワンは立ち止まり、ナイフを防ぎ切る。

(当たらないかったか。でも、牽制にはなったはずだ)


「俺の能力はこんな事も出来るんだぜ?ファイア

ーボール!」


火の玉がスピネル目掛けて飛んでくる。

(速度はそこまで速くは無い、避けられる)

スピネルは全て避けることができた。

しかし、避けている隙にワンは超近距離まで接近してきていた。

(まずい、距離を取らなければ!)


「リターン!」

「かかったな!フレイムバン!」


ワンの背後に飛んだ瞬間、爆発が起きた。

スピネルはモロを爆発を食らい吹っ飛んだ。

(マズイ・・・・・・動けない)


「お前、名はなんと言う?」

「スピネルだ・・・・・・」

「スピネル、まだやるか?降参すれば、ここで辞めにしてやる。」

「降参だね。動けない」

「分かった」


ワンは剣を鞘に収めた。

(悔しい・・・・・・組織に近づくチャンスだったのに!)


「よしスピネル、合格だ」

「えっ?」

「合格だと言ったんだ。ウチの組織に来るか?」


スピネルは考えた。ここで組織に入ればヴァイスに近づくかもしれない。しかし、同時に常に身を危険に晒す事になる。

スピネルは考えた。


「いや__今回は遠慮しときます」


ワンは驚いたような顔をした。


「そうか・・・・・・何か理由があるんだろう。深くは聞かない」

「ありがとうございます」

「その代わり、今すぐ俺の前から姿を消せ」

「はい」


スピネルは走ってその場を立ち去った。

最後の瞬間、ワンからは殺気が漂っていた。

予想外の返事に、怒ったのかもしれない。

きっとあのワンと戦えば、瞬殺だっただろう。

もっと、強くならなければ__

スピネルはそう、決心した。







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