完璧主義のミニマリスト

サンライズ

完璧主義のミニマリスト

都内のマンションにある男が住んでいた

男は最近古本屋で買ったとある本を読みミニマリストに目覚めていた

早速部屋の余計なものをなくして必要最低限の物だけにしようとまずは業者を呼び家具などの大きなものを運び出してもらうことにした

棚にテレビに洗濯機すべてベランダから運び出してもらいそのまま処分を頼んだ

粗方大きなものは捨て終わったので業者に帰ってもらい一息ついた

もう夕方だった

しかしおちついて部屋を見渡すと寧ろ棚やタンスなどにしまっていた小物がしまうところがなくなり床に取り敢えず置いたことで寧ろ散らかってるように見えてきた

いけないこれではミニマリスト失格だ

男はそう思い直ちにベランダから捨てていった

実家から持ってきたゲーム機、友人からもらった漫画、彼女から貰った誕生日プレゼントの人形

生活にいらないものはすべて捨てたしかしそれでも納得のいかなかった男は

外食をすればいいと言って食器などもすべて捨てていく

そして服も財布もなにもかも捨てた男の部屋には家主である男と男のバイブルである例の本だけとなってしまった

そうしてもう外は真っ暗になっていた

寝る前に男は残り少しとなった例の本を読み進める事にした

そして最後の最後の1ページを読んだ男は気が付いてしまったこの部屋において一番の余計な物が何か真っ先に捨てるべきであったものがなにか

男は飛び跳ねるように起き上がりベランダへと走り最後の一つとなったいらないものを捨てた


部屋に残されたのは男が読むことのなかった奥付が偶々開かれた例の本だけであった

そこには前の持ち主が書いたとある言葉の引用とそれに続く独自の解釈であった


モノがない場所が増えれば、それだけ新しい可能性が生まれてくる

…だからって捨て続けて新しく生まれた可能性も捨てるのは間違ったことだ


ー ー ー

この物語はミニマリストを否定するものではありません

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