所長室
「これまでの罪を認め、懺悔し、悔い改めて帝国のために『証言』したくなったらいつでも来なさい」
捕虜になった最初の日、収容所所長から言われた言葉だった。
その時は祖国を、仲間を売るものかと思っていたが、実際ギロチンが聞こえ始めると正直になる。
ここに入り、情報を証言すれば恩赦が貰える。
共通認識、虎の男を追ってきて見れば、多くの捕虜たちがじっと何かを待っていた。
恐らくは情報を集め終わった捕虜をなんとかしようと、正しくはお零れをもらってなんとかしてもらおうとしている蛆虫ども、それでも多少なりとも足止めになるのなら価値はあるがしかし、走るように歩く虎の男へ、言葉をかけるどころか遮ることすらしやしない。
そうしてる間に所長室前に、当然看守の警備が左右を重ねてる間へ滑り込む姿に、できることは喋ることだけだった。
ノック、その前に看守が虎の男を囲う。
「調べさせてもらう」
宣言、同時に羽交い締めにし、下から順にボディチェックを行う。
そして出てきたのは、歯ブラシナイフだった。
「言ってた通りだったな」
さっき喋った、正しくはチクった看守が話しかけてくる。
『密告』チクリはどこでも嫌われるが、背に腹は変えられない。
「密告通り『捕虜の名前』と『所持していた道具』が一致した。当てずっぽじゃなかったようだな」
言われてドキリとする。
あのまま行かせるぐらいならと時間稼ぎのつもりだったが、これで歯ブラシナイフをどこかで捨ててたならば返り討ちにあってたところだった、わけだった。
「そんな顔するな、一度だけなら見間違いですんでだ」
驚く虎の男、連れていかれるのを見ながら看守は親しげに話してくる。
「それよりもご褒美だ。適当に、なんつったか『赤エリア』の『2レベル』の話でもしてやるよ。興味あるだろ?」
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