皇帝絵画前
廊下を進むと急に道幅が更に広くなり、まるで部屋のような空間に出る。
その奥の壁一面を覆うように憎っくき帝王殿の全身図が掲げられてあった。
それだけの空間、無駄としか言いようのない場所だが、ここの看守は、それ以前に帝国のゴミどもは、この皇帝の絵を飾る場所は絶対に必要であり、そしてこの絵を見ることは至上の喜びであると本気で信じているようだった。
そのような連中に負けたのは屈辱の極みだが、今は恩赦、生き残ることだ。
残り一つの情報、どのようにして手に入れるか、思案してると衝撃、冷たさ、そして痛みが襲ってくる。
見れば出血、右二の腕、切られて、つまりは攻撃された。
「おい」
攻撃主は部屋の角から、虎のような男がぬるりと現れた。
「知ってること吐け」
言葉に、驚きが消えて怒りが湧き出た。
軍隊仕込みの構えから釘を構えて攻撃体制、これに虎の男も同様に構えた。
同じ軍にいた身、戦い方も同じ、違うのは体格と、それと得物、虎の男が構えるのは歯ブラシを削ったナイフだった。
支給されたものを壁にでも擦り付け、鋭く磨く技術、おそらくはそういった『スキル』を持っているか、あるいは持ってるものから奪い取ったか、ともかくもこの収容所では最上位に近い武器に違いなかった。
それを相手に釘でなど、勝てるはずもなく、三箇所の出血から思わず膝をつく。
そこへナイフ、突きつけて、虎の男は「さぁ」と笑う。
これに、屈服、思わず命乞い、出てきたのは先程手に入れたばかりの『赤エリア』の『5レベル』だった。
これに虎の男は更に笑う。
「揃った」
歌うような一言、楽しむようにナイフのない左手の指を折って数える。
「これが『赤』元から持ってたのが『黄』そこに『白』『紫』『青』で、全部『5レベル』証言できる」
切られたよりも衝撃を受けた。
証言、複数いるなら恩赦を得られるのはより重要度の高い情報からだろう。同じエリアで統一してもその中には低レベルな情報も含まれる。
それよりもエリアバラバラでも高レベルで、数字を統一した情報の方が、価値は高い。
まだハッタリの可能性、だが虎の男は素早く立ち去る。
証言に向かう、これ以上の長居は無意味、それが真実と言っていた。
だが、負けたばかりの俺には、喋ることしかできなかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます