面会室

 外壁にへばりつくように出っ張った建物、ここが最後の賭けだった。


 入るとこれ見よがしに厳重な鉄格子の扉、それが何重にも重なってるのを、ここに入るときに見せられた。


 この収容所唯一の出入り口、もちろん看守の監視が厳重で、脱獄など不可能だ。


 目的地は別、隣接する面会室の方だった。


 敵国である帝国にわざわざ面会に来れるものなどいるわけもなく、使う予定のないならば無駄な場所として物置に転用されていた。


 そして今、置かれているのは、この収容所までに身につけてきた私物一式だった。


 武器や貴重品は輸送前に没収されていたが、手帳やメモ用紙などは没収されずにここまで運んで来れた。


 それが今も残っているなら、人の日記よりも貴重な情報源になるだろう。


 このような重要な場所に自由に行き来できるのは、ここに名ばかりの郵便受けがあるから、ギロチンを待つ捕虜にも手紙が来ているかを確認する権利は保障されているらしい。


 念のため何も届いてないのを確認してから物置、面会室へと忍び込む。


 見つかれば当然独房行き、だがしのごの言っている余裕はない。


 大人数での密な巡回、掻い潜り、乱雑に積まれた荷物を漁る。一つ、引き抜くと大きく傾く山、このまま持ち出すのは不可能、一つ見終えれば元に戻して次へ、順次手当たり次第に情報を漁る。


『黒エリア』の『4レベル』、『緑エリア』の『2レベル』、『赤エリア』! けど『3レベル』と被っていた。


 自分の呼吸に驚く緊張の中、それでもようやく『赤エリア』の『5レベル』を見つけ出せた。


 あと一つ、思っていると急に騒がしくなる。


 見れば看守の増援、この増え方は四人は殺されたらしい。


 ……これ以上は無理、諦めて外へと出た。

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