運動場

 収容所の西側の大部分、雑草も生えない砂砂利の地面、広々とした空間があった。


 元は休憩時間中に体を動かす場所に、作業場と同じく職場として作られていた家畜小屋と畑を潰して見晴らしのために更地にして、この広さとなったらしい。


 こうなる前の天気の良い日にはランニングしたり靴下ですキャッチボールしたり、あるいは談話している姿がちらほら見えた。


 しかし今は巡回している看守が一人いたぐらいで、他は誰もいなかった。


 そんなところを一人で歩いていて何か言われるかとも思ったが特になく、ただただ長い移動を強いられるだけだった。


 ただ、全く用いられているわけではないらしく、所々砂砂利の上、血痕と引きずった跡が見られた。


 恐らくは恩赦のための殺し、安全ではないことはわかった。


 だがそれでも進むのは、この先で賭けに出るためだった。


 自分ではかなり効率的に動いているつもりだったが実際はそうではなく、もうすでに証言に出れる情報を集めきったものも出ているだろう。


 もしもの話、このまま上手くいって情報集め終わり証言することができたとして、もしその時同様の情報を持つものが複数いた場合、優先順位は必然、早い者勝ちになると想像がつく。


 これ以上の遅れは助からない。


 最後の賭けに出るしかなかった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る