作業場

 一度外に出て少し土を踏んで、やっと本来の目的地にたどり着けた。


 外観は倉庫、四つ並んでいて、それぞれが木工、裁縫、陶器、鍛治の作業場となっていて、中には看守こそいるが出入りは自由だった。


 元は囚人の職業訓練場だったのだろうが、今実際に稼働してるのは木工と裁縫だけ、陶器と鍛治はそれぞれ窯の火が消えていて何も作れなかった。


 残る木工と裁縫も、自分が使うものを修復するだけだった。


 だが目的は修復では無い。


 木工の中に入ると思っていたよりも人が多かった。


 看守も多いがそれ以上に捕虜が多く、けれども作業しているわけでもなく、だべっていた。


 情報交換、だけでは無い様子だがこちらも目的では無い。


 思っているよりも入り組んでいて死角の多い中、注視しながら歩き回り、落ちてないかを探す。


「もう無いぞ」


 声、頭を見上げれば犬のような男がいた。


「目的はこいつだろ?」


 そう言って犬の男の手で光るは釘だった。


 小さな寸鉄、けれどもその先端は鋭く、この収容所では強力な武器となる。


 もちろん持ち歩いているのを看守に見つかれば独房行きだが、一々所持品検査をしないのは経験してきた。


 その釘を、先に盗られた。最速でここに来るべきだったのかもしれない。


「交換してやってもいいぜ? 情報か、何か道具があるか?」


 言われて思い出すのは最初に手に入れた日記だった。


「あぁそれでいい」


 交渉成立、交換して釘を手に入れた。


「ついでに情報も交換するか? こっちには『赤エリア』が一つある」


「……『紫エリア』なら」


「成立だ」


 こうして『赤エリア』の『4レベル』が手に入った。これで1、3、4、あと残るは二つ、2、5が揃えば証言できる。


 ……一方の犬の方も満足しているようだ。


 図書館で簡単に手に入る情報、最速でここに来るのも考えもののようだった。

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