第二話 キイロさんと朝

 朝目が覚めたら、目を擦りながら時計を見る。時計の針は6時を指している。今日は早起き。

 足を床に下ろして、伸びをしてみる。透けたカーテンから、柔らかい朝日が入っている。扇風機を消して洗面所に向かい、冷たい水で顔を洗っていると、玄関の開く音がした。


「おはよう」

柔らかいタオルで顔を拭いたら、互いにあいさつを交わす。

「今日は学校?」

キイロさんがたずねる。

「そうー。今日は体育があるの」

私は体操着を畳んでリュックに入れた。

「そっかー。じゃあ飲み物ちゃんと持って行きなよ」

そう言いながらキイロさんはもう、私の水筒に麦茶を入れてくれている。

「うん。ありがと!」


 ワイシャツの袖に腕を通し、ボタンを閉める。グレーのプリーツスカートを履いて、うーん今日はネクタイの気分。えんじ色のネクタイを巻いてみる。

 うん、いい感じ。鏡で自分を見て満足する。

 朝、納得のいく自分の姿を見ることは、その日のモチベーションに繋がるでしょう?

 髪をとかしていると、櫛を持った手を別の手が包み込んできた。私の後ろにきたキイロさんに、鏡越しにニッコリして見せる。


「柔っこいねー」

そう言いながら私の髪を整えてくれる。

「ほんとー?」

私がまたニッコリすると、キイロさんはかわいい、と囁いた。


 キイロさんは私から離れ、まな板と包丁でとんとん、と柔らかいリズムを刻む。


 二人で手を合わせて、朝ごはんを食べる。レタスを刻んでトマトを乗せたサラダには、キイロさんの好きなワサビドレッシングをかける。

シャクシャクっと音を立てて口の中をみずみずしさが駆け巡る。

「レタス美味しいね」

私が声をかけてみると、キイロさんはひとつ頷きほほえんだ。

「美味しいね」


 歯を磨いて、キイロさんの作ったお弁当をリュックにつめ、それを背負う。

「いってらっしゃい」

そう言うと、キイロさんは私の髪を撫でた。

「行ってきます!」

元気に扉を開けて、光の中にとびこんだ。

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上の階の人 うぶげ @yuqiyuqi4

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