第7話
あの夏は、陽炎が見せた幻なのかもしれない……と言えば格好は良いが、単純に、暑さが精神的に弱っていた雫の頭を狂わせたのだろう。
幻であったのだと雫は信じているが、まだ生きている。幻だけど、大切な思い出。
今までしてこなかったことをたくさんした。
初めて親に反抗して、初めて友達の頼みを断った。疲れたときは、あのときのように、学校をずる休みした。
何人かはそんな雫を見て離れて行った。だけど雫は、あぁ、そんなもんか。と、そう思っただけだった。
今までより、ちょっとずるいことをしただけなのに、随分と楽になるものだ。
呑気でムカつくけれど、優しくて雫を思ってくれる誰かが、自分を生かしてくれた。
そんな経験、人には言えない。誰にも秘密で、本人ですら信じてはいない。
だけど雫は今日も生きている。
何かは、まだ雫を死なせてはくれない。
死の淵少女 天音あおと @aototty
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