金曜日
金曜日の夜。ついに。金曜日の夜。毎日疲れて憂鬱な私の気分も金曜日ともなれば少し上がる。
金曜日の夜はいつも決まって散歩をして、外食をする。
ふらりと歩くことが私にとってはなんとも自由で楽しく、現実の中でできる唯一の現実逃避だと思っている。 新しいもので溢れた街から1、2本隣の道をひたすら歩くと今にも崩れそうな家が出てくる。あとはひたすら惹かれる道の方へ進む。
運が良ければ長い商店街に着き、なければ空気の重い住宅街にたどり着く。
今日は運良く商店街、しかも長めのところにたどり着いた。
ほとんど閉まっている商店街の中で唯一空いているお店を覗いて見ると仲良さそうに話す声か気まずそうにテレビを見るバイトと店長が居る。
私は気まずいバイト側だったなと思い出してそのまま色々なことを思い出しながら歩いていたら何処からかカレーの匂いがした。私は今スパイスカレーにハマっている。匂いのする方へ行くと大当たり。お腹も空いてきた頃だったから軽くメニューを見て店に入った。
驚くほど大きく派手な柄の皿で運ばれてきたカレーは繊細な味でテーブルに置かれたスパイスをかけるとすっきりとした辛さが喉から身体中をあたためた。
帰りにホームレスらしきおじちゃんが弁当を食べながら声をかけてきた。人と話すことに慣れていない私は急いで目の前のコンビニに入りどこかへ行くのを待ってアイスを買った。
駅に着いて安心した時左側のコンビニからあのおじちゃんがさっきのまま出てきた。
弁当を食べながらこっちへ来て、「よぉ」と言ってあっさり去っていった。何故だか少し追いかけたくなった。
誤魔化すようにアイスを開けて、1番しみる前歯で噛んだ。
病める時も健やかなる時も何時もいるそいつの名は「現実」 ポタージュに冬毛 @rakka298
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