病める時も健やかなる時も何時もいるそいつの名は「現実」

ポタージュに冬毛

14日

歯を磨いた。これは終わりの歯磨き。

いくら磨いても綺麗になった気がしない奥歯をひたすら磨き続ける。無心で磨くうちに気持ちよくなって目をつぶる。歯磨きはオナニーみたいだなとかくだらないことを考え始めたらさっさとうがいをして部屋に戻る。

部屋にはもう数ヶ月、いや、正確には1年程干していない布団が敷かれていて、入ると襲ってくる痒みに対抗するように2週間前に全体にかけた消臭除菌効果のあるスプレーのことを思い出す。

眼鏡を外し、部屋の四隅を見るとあの世のなんちゃらが…などという話を思い出しながら真っ暗になった部屋を見渡す。

水虫と痔が気になるようになってから、そういう類のものへの恐怖は格段に減った。

どうでもいいことを考えても眠くならなくてネタが尽きて明日のことを考える。頭の中のひつじは元気なく柵にぶつかり出す。こうなるともうなかなか寝られない。けれど起き上がるには重すぎる体がもう出来上がっている。暇だから金縛りでもなんでも起こったらいいのにとか思う。

スマホを触っていても天井を見上げていても仕方ないからアイマスクをつけて眼球を極限まで上に向ける。これは授業中睡魔に襲われた時、起きようと必死に開けられる目の真似だ。あまりの寝れなさに最近思いついた強制的に眠くなる方法。

ただ、今は布団の上。めちゃくちゃ寝ていい。

寝ちゃいけない時、この睡魔に負けてそのまま寝ることが出来たらどれだけ幸せだろう…というのから生まれた強制的、かつ、幸せに眠れるこの方法を成功させるには教室にいる想像力が必要だ。

だからアイマスクをつけて集中して想像する……


「はい、じゃー答え合わせしますよー

問1、はい、この答えははいですね〜

じゃあ問2、えーっとこれは、はい、これもはいですね〜」

キーンコーンカーンコーン

「おい西岡〜俺の机乗るなよ〜なんかお前乗ってからやけにがたがたするんだけど床削れてないか?」


「はい、皆さん掃除してください明日はビートルズが体育館でライブするからね〜」


「明日はクラスみんなの弁当で映画を作るので忘れないように!」





やったぁ 夢だ



眠れた喜びと安心感を夢の中で感じる。


それなのに…この方法で寝た時は夢の舞台、「学校」という場所が現実を思い出させる。一瞬起きて枕元にある現実のスマホで時間を確認する。4時12分。

なんとも言えない気持ちのまままた眠り、一瞬でアラームに起こされて朝を迎えた。二度寝したい二度寝したい二度寝したい!そんな気持ちを半分抑え、寝っ転がって靴下を履いた。

日焼け止めを塗り鏡に向かって笑う。くまが目立っていて今日も全然爽やかじゃない。

目の下に日焼け止めを塗り急いで家を出た。汗で全て落ちることに気づきながら。




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