号外:選別試練合格者発表


“号外!! 選別試練終了! 混沌極まる異常事態! 選別試練の歴史が動く・・・!?


 毎年恒例の選別試練トライアル特集!

 ついに今年の選別試練が終了し、選別試練を取り仕切る神々より最終合格者が発表されました!

 今回の最終試練結果につきましても、私ことオトハ・ゲティングスが担当いたします! よろしくお願いいたします!


 読者の皆様にまず最初にお伝えしておきたいのは、今回の選別試練は例年に比べてあまりにもイレギュラーだということです!

 本記事を執筆している際には既にタルタロス島を出て、湾岸都市ポートハブまで戻ってきているのですが、今でも取材した内容が事実だということに私自身が信じきれていません……!

 いやはや、一体どこからお伝えすればいいのか!

 おさらいと言うよりは、読者の皆様の心の準備を整えるために、一旦、第一選別の合格者一覧をもう一度ご覧頂きましょう!


 “鷹の目ホークアイ”シモン・ククレ。

 “彗星スター”コメット・フランクリン。

 “加護狩りギフテイカー”ヴィンセント・バルサザール。

 “二つ名なし”ロク・シックス。

 “二つ名なし”レヴィ・エリファス。

 “氏名不明”銀髪の少女。

 “氏名不明”麻袋を被った女。

 “堕剣”ネビ・セルべロス。


 以上、八名が第一選別合格者となっていました!

 そしてなんと、この八名の内、四名が生死不明(本記事執筆時)という悲劇的な結末になってしまいました!

 死傷者の少なくない選別試練ですが、第一選別合格者の内、半数が消息不明の状態になると言うのは前代未聞です!

 それではここで、数少ない生き残りの一人、“鷹の目ホークアイ”シモン・ククレからのお言葉をご紹介いたします!


『いや、俺には全部お見通しだったぜ。最初からこれは全て罠だったのさ。はなから神々は今回、まともに選別試練をする気なんてなかったんだ。全ては“堕剣”を殺すための、罠。それだけさ。聞けば、今回の選別試練トライアルの最終試練は、あの第十一柱“鬼神ベレト”が代行したらしいな。どう考えてもオーバーキルだろ? 合格者を出す気がないとしか思えん。あのレオナルド・ベッキーが不合格になったり、パルクスが選考辞退をしたり、何だかきな臭いとは思ってたんだよな。最も、俺ぐらい勘が良い凄腕の加護持ちギフテッドになると、引き際ってのがわかるからな。こうやってまだ五体満足でお喋りできるってわけさ。おそらく、俺が今回の選別試練に参加した加護持ちの中で、一番深淵に近づいた存在だろうな。なぜなら俺は、実際に堕剣を目撃して——おっとっと! 記者さんに話せる内容はこれくらいだな! 歴史上に残る地獄の選別試練を、この俺、シモン・ククレがいかにして生き延びたのか! ここから先の詳しい内容は俺のポッドキャスト、“シモン・ククレのBAN里SHOW握!- Presented by 通神マルコシアス”でオンエア予定! 是非是非、チェックとマイリス登録ヨロシク!』


 少し宣伝過剰なシモン・ククレの言葉の中で、読者の皆様が引っかかった点があると思います!

 そう! 

 第十一柱“鬼神ベレト”!

 なんと今回の選別試練の最終試練は、特別に鬼神ベレト様が担当したとのことでした!

 あの“堕剣”の剣聖時代にも試練を突破していない、第十一柱の参戦!

 堕剣ネビ討伐を目的としているのは火を見るより明らか!

 実際に、今回の選別試練に何が起きていたのか!

 畏れ多いですが、私は直接神々からお言葉を頂戴することができました!


『取材? こんなのいつもやってたっけか?』


『よく覚えてないでござる。普段は、グシオンが担当してたのでは?』


『あー、そういうこと? あれ、てかグシオンって今どこ?』


『グシオンはどうでもいいでござるよ。ウァラク殿、まずはこの乙女の問いかけに答えるべきでござろう』


『やけにこの人間に協力的だな? もしかして、ちょっと狙ってる? ガープって確かにロリコン巨乳好きそうな顔してるもんな』


『は、はあああい!?!? な、何をわけのわからないことを言ってるでござるかこの耄碌ジジイは!? 頭ネビ・セルべロスでござるか!?』


『まあいいや。それでなんだったっけか。今回の選別試練の結果と担当神についてだっけ? そうそう。全責任は鬼神ベレト様にある。今回はそういう感じになってるから』


『全責任って……ウァラク殿、あとでどうなっても拙者は知らないでござるよ』


『選別試練の合格者は一名だけ。皆さんご存知の、“堕剣”ネビ・セルべロスだ。もちろん合格判定を出したのは儂じゃないよ。鬼神ベレト様だよ。本当だよ。嘘じゃないよ。あと第二選別の合格者? あー、儂らの同胞、あ、違った違った、元同胞の“狂神カイム”とあと……あれ、あの銀髪の少女の名前なんだっけか?』


『最後の方にネビと一緒にいた子でござるか? なんだったでござろう。確かラムダとかアミダとかアビバみたいな名前では?』


『そうそう、そんな感じだよな。なんだっけな。カミダみたいなアスマみたいな……』


『アリタ?』


『あ! それだ! アリタ! ……あれ? やっぱ違うか? たぶん、アリタだよな? 違ったっけ? まあ、いいか。なんかアリタとかいう名前の女の子も洞窟の中を突破してきてたな。洞窟の中から最奥まで辿り着いたのは、堕剣ネビ、狂神カイム、アリタの三名だけ』


『ちなみに今、鬼神ベレト様は体調不良のため、面会謝絶中でござる』


『あとそれと、今回で選別試練は最終回です』


『えぇっ!? 前触れなく急にぶっ込んできたでござるな!? そうなのでござるか!?』


『あ、ガープは続けてもいいよ。儂はやめる。儂は絨毯になるのに忙しいから、もう選別試練はやめる』


『いやいや、意味不すぎでござるよ。まじ言ってる内容ネビ・セルべロスでござる』


 念の為言っておきますが、神に誓って、この記事に嘘偽りはありません!

 正直言って、情報量が多すぎて、私も処理しきれていません!

 堕剣ネビ・セルべロス、狂神カイム、そして謎の少女アリタ!

 この三名に加えて、先ほどお言葉をご紹介させていただいたシモン・ククレを含めた四名が今回の選別試練の数少ない生き残りとなります!


 さらに選別試練という伝統自体の終了も、第四十一柱“海神ウァラク”から宣言されました!

 一体最終試練で何があったのか!?

 神々はこれ以上は多くは語りませんでしたが、堕剣ネビがまたしても多くの犠牲者を出し、選別試練の歴史に終止符を打ったということは事実です!

 いよいよ、加護持ちというシステム自体にも大きな影響を及ぼし始めた堕剣ネビ・セルべロス!

 間違いなく、私たちは今人類史の分岐点に立ち会っております!

 最後になるかもしれない選別試練の最終結果を、ここに記録させていただきます!


 以下、三名、第二選別合格者。


 “銀髪”アリタ。

 “狂神”カイム。

 “堕剣”ネビ・セルべロス。


 以下、一名、最終選別合格者。


 “堕剣”ネビ・セルべロス。


 


 それでは記事の結びに、“加護狩り”ヴィンセント・バルサザールが残した“遺書”を公開させていただきます。

 これは第二選別途中で消息不明になる前に、ヴィンセント本人が私に、選別試練から自分が戻らなかった場合、記事にして欲しいと伝えられたものです。

 まだ私は中身に目を通していませんが、彼なりのどうしても伝えたいメッセージが記されている事と思います。

 これは私的な感情になりますが、いまだに加護狩りのヴィンセントが姿を消したことを受け入れられていません。

 彼は確かに人格的に問題の多い人物でしたが、選別試練の間、私の命を何度も救ってくれました。

 はっきり言って性格の悪い人でしたが、確かに憎めない人でもありました。

 ありがとうございました。ヴィンセントさん。

 ここに、広報商社RCCを代表して、またオトハ・ゲティングス個人としても、ヴィンセント・バルサザールに感謝と祈りを捧げます。


 R.I.P. ヴィンセント・バルサザール。

 

 まだ死んでねぇーよ、というクレーム、待ってますよ、ヴィンセントさん。



(※遺書の内容は、完全な個人的見解かつ、思想的に社会通念上問題のある発言が見受けられますが、個人意思のリスペクトの観点からそのまま記事にさせて頂きます:広報商社RCC編集部)

 


 

〜〜〜




『おー、この遺書が公開されてるってことは、俺は死んだってことだな。


 はっきり言って、今回の選別試練に参加している奴らも、唯一の例外を除いてザコばかりだ。

 このザコばかりの選別試練で俺が死ぬとしたら、その唯一の例外に遭遇したときだけだろうな。

 つまりは、“堕剣”さ。

 一目で分かった。

 アイツは、俺と同類だ。

 完全にイカれちまってる。

 はっきり言ってやるよ。

 堕剣は、本気で神を殺し尽くすかもしれねぇ。

 いよいよ、お前らは選ぶときが来たんだ。


 神を選ぶか、堕剣を選ぶか。


 少し前だったら、戯言だと吐き捨てられた妄言の類だったかもしれねぇが、お前らも薄々気づいているんじゃねぇか?

 一体、いつになったら、堕剣は死ぬんだ、ってな。


 そもそも、始まりの女神はなぜ堕剣を殺さず、追放なんて中途半端なことをした?


 そんなの決まってる。

 殺さなかったんじゃない、殺せなかったんだ。

 堕剣は、始まりの女神ですら、殺せない。

 それほどの異常イレギュラーなんだよアイツは。


 なあ、日和見気取ってる最序列の神々よ、そろそろ焦った方がいいんじゃねぇか?


 おい、他人事気取りの他の神下六剣さんよお、今更敗けて死ぬのに怯えてんのか?


 俺は死んだ。

 堕剣に挑んで死んだ。

 悔いはない。


 選択の時だ。

 力ある者は、選ぶべきだ。


 堕剣を殺すか、堕剣に殺されるか。


 傍観者はもうこれ以上許されない。


 俺より強い奴は全員、死ぬか殺すか、今すぐ選び取れ。



 それが俺の、遺言だ。



P.S. オトハはH寄りのGカップ』


 

 



著 オトハ・ゲティングス”

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