号外:神殺し
“号外!! 学園都市ロビンレッグ襲撃!! 第七十一柱、初神バルバトス死亡か!?
階歴662年2月2日、連合国ゴエティアに属する七大都市の一つ、学園都市ロビンレッグに堕剣ネビが姿を現したという知らせが入った。
元神下六剣の
しかし、その後約一ヶ月の間消息不明となっていたが、ついにその姿をロビンレッグで見せたのだ。
どうやら堕剣ネビの今回の標的は、初神バルバトスが管轄するギフテッドアカデミーだったようで、主な目撃情報は校内に集中している。
実際にその堕剣ネビの姿を見た生徒は、怯えた表情でこう語った。
『う、噂には、なっていたんです。久しぶりにアカデミーの生徒以外で、卒業試練を受ける奴がきたって……だ、だからちょっと顔を見る程度の、興味本位だったんです……そ、そしたら、あ、あの人が、う、うわああああああああ!!!! やめて!!!!! ごめんなさいごめんなさいごめんなさい!!!!!』
堕剣ネビとの遭遇が余程ショッキングだったのか、その若い少年生徒はトラウマを植え付けられてしまったようで、当日の事を聞くだけで過呼吸になってしまいインタビューは満足に続けられなかった。
実際に彼は顔面の一部を骨折するなど、実際に外傷も受けていて、もはや堕剣ネビは子供には手を出さないといった最低限の倫理観も失っていることを明確に示している。
そして卒業試練の受験者として身分を偽った堕剣ネビは巧みに初神バルバトスに近づき、この日以降、初神バルバトスは消息不明となっている。
初神バルバトスが身柄を拘束されている可能性もあるが、堕剣ネビの加虐性から考えるに生存を期待するのは困難かもしれない。
全ての加護持ちの師でもある偉大なる初神バルバトスの誇りを重んじる性格から考えても、逃走といった線も薄い。
人々から尊敬され、信頼されていた神の一柱がいなくなってしまったことに対して、今や世界中が失意と共に喪に伏せている。
『今でも、信じられません。まさかバルバトス先生が。どうしてといった気持ちが大きいです。あれほど素晴らしい気品を持った方は他にいません。生徒全てに愛された方でした。あの日も、アスタという名前の受験者の少女の保護者として来ていたあの人が堕剣ネビだと私が気づけていればバルバトス先生も今頃……』
ギフテッドアカデミーの受付を担当していた若い女性は、今も自責の念に苦しんでいる。
彼女の言葉からすると、堕剣ネビは狡猾にも少女を人質に取り、隠れ蓑として利用していたようだ。
もしかすると、初神バルバトスが堕剣ネビに遅れをとったのもこの人質が大きく関係している可能性がある。
さらに驚くべきことに、この襲撃の当日、偶然にも黄金世代の第一人者である
『……はい。そうですね。たしかに、その日、私は学園都市ロビンレッグにいました。たまたま近くを通りかかったので、尊敬する師であるバルバトス先生にご挨拶をと思って立ち寄ったんです。でも、まさかあの後、堕剣ネビが現れるなんて。今でも悔しい思いでいっぱいです。私は神下六剣の席とかにはあまり興味がありませんけど、それでも、もし近くに堕剣ネビがいたのなら、私が命をかけてでも先生を守ったのに……悔しいです。必ずバルバトス先生の仇は討ちます。誇りにかけてあのくそ––––じゃなかった、堕剣ネビの凶行を私が止め、罪を償わせます』
後から初神バルバトスの訃報を知ったという黄金姫ナベルは、心の底から悔しそうな表情を見せて、普段は笑顔の印象が強い彼女にしては珍しい血走った眼でそう語った。
元剣聖とは言っても、今や全ての加護を奪われた堕剣ネビの力は大きく弱まっているはずだ。
もしも黄金姫ナベルであれば、この悲劇も止められた可能性が高い。
なんと言っても、彼女は人生無敗の天才加護持ちである。
この先、堕剣ネビの暴走を止めることを彼女に期待せずにはいられない。
では、そもそもなぜ、堕剣ネビは初神バルバトスを狙ったのか?
いったい、次に堕剣ネビが目指す先はどこなのか?
ここで私たちは、現神下六剣の一人、“剣姫”タナキア・リリーに独占取材をすることに成功した。
『……知らない。でも、本当にバルバトスをネビが殺したのなら、あたしがケジメをつけさせる。以上』
得られたのは短い言葉だったが、非常に重い言葉だった。
剣姫タナキアといえば、堕剣ネビと同じ十三期生としてギフテッドアカデミーを卒業した、言うならば旧黄金世代の一人であり、数少ない若き日のネビ・セルべロスを知る人物の一人だ。
そしてその彼女が、堕剣ネビの暴走に対して、ついに動くことを宣言した。
神下六剣が、ついに堕剣ネビ討伐に動く。
それほどまでに、学園都市ロビンレッグの襲撃は衝撃的な出来事だったということだろう。
噂では、主席でアカデミーを卒業した剣姫タナキアとは異なり、堕剣ネビはアカデミー時代は成績が最下位であり、不遇の時代を過ごしていたという。
果たして、これは堕剣ネビによる、世界への復讐なのだろうか。
神殺し。
この究極の禁忌をついに犯してしまった堕剣ネビが次に向かうのはどこか。
剣聖と称された、人類最強とまで一度は謳われた男は、どこまで堕ちてしまうのか。
最後に、記事の後半に差し掛かって、初神バルバトスの死亡が確定しているかのような書き方になってしまった事に関しては、訂正をしておく。
偏向報道の意図はない。
私も初神バルバトスの生存を信じている者の一人である。
著 ジョン・ライター”
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