第17話 隠し通路の中でサラの秘密を聞いた

「なんで私が何か隠してるって思うの?」


サラが不満げにジェマへ言葉を返す、確かにさっき髪が光ったり誰にも分からない隠し通路を見つけたりしたけど……そういう体質や能力だっていう可能性も無くはない。


それが喋りづらい事なら尚更、パーティーに不利益があるわけじゃないし、あまり踏み入ることではないと思うけど。


「そこは俺が説明してやる、さっきの髪の発光には覚えがあるからなぁ」


ジェマの意識が魔縁と切り替わり、荒い口調で喋り出した。


髪の発光に覚えがあるって……他にもサラのようになる人が過去に居た、もしくは今も他に居るってことなのかな。


「な、なによ……」


サラが少し焦ったようにぽつりと呟く、本当に何かあるんだろうか?


「てめぇ、魔族だな?」


「えっ?」


魔縁からのとんでもないカミングアウトに、僕は変な声を出してしまう……サラが魔族?


そんなわけない、そう思ってサラを見る――サラは残念そうな顔をして俯いていた、本当に魔族なんだろうか……。


魔族は伝承になるくらい昔に人間と戦争をして敗北、その後は身を隠して暮らしているだとか絶滅したとか文献によって様々な憶測が書かれているくらいの存在。


だからこそサラが魔族だなんて信じれないし、それを否定しないサラに驚いてしまう。


「どこで気づいたの……まだ黙ってるつもりだったのに」


サラは魔縁の言葉を否定するどころか、肯定したかのような返事をする。


僕はそれに気づいてしまってそれ以上言葉が出て来なくなった。


「さっきの髪の発光だ、それと魔族だけが知ってる異空間を開くのもな。

 俺も刀に封印されちゃいるが元魔族だ……バレねぇわけがねぇだろ」


「はぁー……そういうことね。

 そうよ、私は魔族――といっても純粋な魔族じゃなくて魔族の血を引いた人間だけど。

 それと人間に危害を加えるつもりは一切無いわ、むしろその逆――過激派の魔族の活動を抑えるために『教団』の一員として行動してるの」


「過激派の魔族だと、知らねえ単語だな」


「私が学んだ歴史では、人間との戦争に負けて魔族は穏便派と過激派に分裂したらしいの。

 穏便派はうまく人間の生活に紛れ込み『教団』を設立、そこで魔族が不当な扱いを受けないよう秘密裏に動いて今があるって聞いたわ。

 過激派はそのまま息を潜めて力と武力を蓄えてるって……ダンジョン生成はその手段の一つみたいで、それを阻止するために魔族の異空間を探しあててるってわけ」


突然飛び出してきたとんでもない情報に混乱する僕、目がグルグル回っちゃいそうだ……。


まさか知らないところでサラがそんな活動をしてたなんて思わなかったよ、というか最初の洞窟ももしかして。


一応確認してみようか。


「サラ、最初に僕たちが潜った洞窟もそれが目当てだったの?」


「あれは本当に偶然よ、ダンジョンって時間が経って成長していくんだけどあの洞窟はまだ生成されて間もないダンジョンだったってだけ。

 中に入ると魔族が生成したって気付けたの、だから異空間を見つけれたんだし」


魔族がダンジョンを生成するなんて誰も知らないんじゃないだろうか……どんな文献にもそんなこと書いてなかったし。


自然生成されるのが通説だからね、だからこそ隠し通路があるなんて誰も知らなかったんだろうけど。


「欲の皮が突っ張った連中を釣って取り込もうって算段か、昔の魔族がやりそうなことだ。

 まさかそんな活動をしてるなんてな、俺が現代に生きてたら過激派に乗っかってただろうなぁ」


「やっぱり、あんたが魔族なら過激派だろうし。

 異空間に潜む魔物さえ倒したらダンジョンの成長は止めれるから、余力があるうちに仕留めたかったのよね。

 8層以降に異空間があると思ってたけど、7層にあってよかったと思ってるわ……ただ、ここを開いてしまった以上魔物を仕留めずに帰ると事故がありそうだから仕留めて帰りたいけど……どうする?」


そんな話を聞いて帰るなんて言えるわけもないけど、不安があって返事が出来ない僕。


あの異形の魔物に勝てたのは偶然だと思ってるし……あれより強いかもしれないと考えると怖くなってしまう。


それより魔縁だ、過激派と意見が近いのなら協力を拒否するんじゃないだろうか……ここでジェマが抜けるのはかなり戦力として痛手なんだけど。


「クレイグの補助魔術とてめぇらの力がありゃ勝てるだろ。

 最悪俺が出れば仕留めてやれるはずだ、ジェマが潰れた時のケアは任せなきゃだがな」


あれ、協力的。


「あら、魔縁が異形の魔物の討伐に乗ってくるなんて意外なんだけど」


「今はジェマが居て存在出来る身だ、てめぇらの不都合になるような行動はしねぇぞ?」


「なるほど、それなら勝てる可能性は充分ね。

 討伐後の事は後で考えるとして早速進みましょうか――クレイグ、補助魔術は任せたわよ」


「分かった……」


僕は流されるように返事をする、サラが魔族だってだけでもびっくりなのにとんでもない事実を聞いて混乱しっぱなしだけど。


でも、あの触手だらけの異形の魔物が表に出るのは避けるべきだと思うし……頑張らないとね。




サラが見つけた隠し通路をしばらく歩くと、粘液のようなものが壁や地面に飛び散った痕跡が所々に見えてきた。


見る限りは前に戦った触手の魔物が出してた粘液と似たようなものだけど……そう思い確かめるため触ろうとしたら2人に止められた。


酸性が強かったり毒があったりすると危険だからやめなさい、との事だった。


ごもっともです。


さらに奥へ進むと粘液の痕跡が増えてくる……それどころかまだ乾いてない粘液が少しずつ増えてきた。


もうすぐ住処に到着するのだろう、最初の洞窟より深い場所に居るけどダンジョンの大きさと比例して深いところにいるのかな。


「フシュルルルル……」


そう思った矢先、聞き覚えのある不気味な声……のようなものが聞こえてきた。


「異形の魔物の声だ……帝国で潜った洞窟と同じ声だから間違いないよ」


「よし、速攻を掛けましょう。

 粘液を出すってことは凍らせれば有利に動けるはず……クレイグはありったけの補助魔術と補助・附与:自由フリーダムで氷属性の魔法剣を付与して。

 サラは再生リジェネレイトを使ったら後方待機、状況を見て他の恢復術を使ってちょうだい」


「わかった」


「えぇ、2人とも気を付けて」


ジェマの指示通り僕は補助魔術、サラは再生リジェネレイトを3人に掛けて最奥目指して全速力で突っ込んでいく。


最奥が見えると、そこには前にも見た触手の魔物――速攻で倒してやるぞぉ!

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