第4話 一難去ってまた一難
「はぁぁぁっ!」
向こうは反応出来てない様子、いけるかもしれない!
僕は少しでも戦闘が楽になるようにと
「フシュルルルル!」
触手を扱う魔物はさっきまでの攻撃と何か違うと思ったのか、奇妙な声をあげて僕から距離を取ろうとする――逃がすもんか!
魔物との距離を詰めて更なるダメージを与えようとすると、魔物は急に身を翻して勢いよく僕に触手を突き出してきた。
その速度は尋常じゃない速さ、本来反応することなんて出来ない……そんな速度だと思う。
なのに僕にはコマ送りのように状況が把握出来て、それに合わせて身体を動かすことによって触手を難なく回避――そのまま魔物へ反撃出来た。
「……え?」
魔物を斬りつけたはずの僕から疑問の声が出るなんて変かもしれないけど、本当に自分がどうして今の攻撃を避けて反撃出来たのか分からない。
「フシャァァァァ!!!」
不気味な叫び声をあげる魔物、さっきの反撃の当たり所が良かったのか明らかに動けなくなっている。
「チャンスだ、このままくたばれぇぇぇ!」
僕は勝機を感じてありったけの力で魔物を何度も斬りつける、途中少しサラに目線を配ったがまだ気絶しているみたいだ。
もしかしたら目を覚ませないくらいの怪我をしてるかもしれない、早く駆けつけないと……!
斬りつけている途中、魔物も反撃をしようとしてきたが最初より明らかに動きが鈍ってきて楽に捌ける――勝てるぞ!
「フシュルル……シャァァ……」
斬りつけて始めて1分ほどだろうか、魔物が力無く声を出してそのままピクリとも動かなくなった。
「倒……した……?」
僕は気が抜けて短剣を魔物に突き刺したままその場にへたり込んでしまった――その直後手の甲に浮かんでいる紋章が光り完成……そして左手に新たな紋章が。
どういうことだろう、これ。
それより魔術もいくつか習得したから確認しないと。
それに固有スキルだろうか、<重唱>というものも別に取得したのを感じ取ることが出来た。
けど
不自由な人に自由を与えるなんて事実を改変する魔術なんて無いだろうし、だからと言って名前からどういう効果かもわからないし。
使って確かめるしかないかなぁ――っと、それよりサラの容態を確認しないと!
「サラ、大丈夫!?」
急いで駆け寄って声をかける、体をゆすりたいけど下手に動かして悪化させちゃダメだし……でもこの状況なら僕がテヘンブルまで運ばないとダメだよね。
「よし……!」
意を決しサラを担ぎ上げようとした矢先、誰かが走ってくるような足音と声が聞こえる。
「誰か居るかー!?」
人間だ……それも足音を聞く限り2人以上。
盗賊かな、と思ったけどそれならあんな風に声を出して誰かを探したりはしないだろう。
多分だけど。
「います、こっちです!」
悪意を持ってない人だという望みに掛けて声を挙げる、サラをずっとこのままにしておくのは心配だし。
それに誰かを探しに来たということは少なくともこういう場所に赴いた経験があるということだ、冒険者駆け出しの僕より遥かに知識があるはず。
「声だ!
しかし何処にいる……ここが最奥じゃないのか?」
「ねぇ、あそこ。
この間来た時はあんな横道なかったよね?」
「あぁ、そうだな……行ってみよう!」
探しに来た人がここに繋がる隠し通路を見つけたみたい、ここを見つけたのは僕とサラが初めてなのかな?
でも今はそんな事どうでもいい、サラを助けてもらわないと。
金銭を要求されるだろうなぁ……今回貰える報酬で払い切れるといいけど。
「処置はこれで完了、後はこの焚き火の近くで体を温めながら目を覚ますのを待つといいわ。」
「ありがとうございます!」
僕たちを見つけたのは
何でもここの調査依頼はCランク以上じゃないと受けれないのに、事務員さんのミスでCランク未満の場所に掲載してしまったのが発覚、依頼書が無いのでこちらへ即座に調査へ来てくれたそうだ。
道理で見たことないゴブリンやあの不気味な魔物が居るはずだよ……たまたま倒せたからよかったけどさ。
「今回はこちらのミスで君たちを大変危険な目に合わせてしまい申し訳ない。
補償と賠償、こっちが払わなきゃと思ってた物が手に入るなんてちょっとお得――なんて思ったけどそんなわけないか。
それだけ僕たちは危険に晒されたわけだし、それにサラだって怪我をして気絶までしている。
たまたま助かったから良かったけど、もしかしたら僕と一緒に命を落としていた可能性だってあるもんね。
有難く受け取らせてもらうとしよう……それより聞きたいことってなんだろう?
「お答え出来ることならお答えします」
「あの魔物はなんだ……?
この洞窟にあんな奴が生息してるなんていう報告は受けてないし、この隠し通路も今まで発見されてなかった。
知ってること、それと奴が使ってきた攻撃方法を覚えてる範囲で教えてくれ」
隠し通路に関してはサラが簡単に見つけてたから疑問を持たなかったけど、長年発見されてないならお手柄なのかな?
でも、ここに来たのは初めてだから知ってることは何も無いし……言った通り答えれることだけ答えておこうか。
「――というわけです、僕から話せるのはそれだけですね」
僕とサラの経緯と触手の魔物について難事解決班の人に説明。
「君の話を信じるとすると、補助魔術師が一人であの魔物に勝った――という事でいいのかな?」
「そうですけど……」
何か含みがある言い方で少し怖い、まぁ補助魔術師が戦闘出来るのなんて珍しいだろうからそうなるもの仕方ないと思うしかないだろう。
「解析で分かった事はあるか?」
僕の話を聞いてた人がサラの手当をしてくれた人へ声を掛ける、いつの間にか触手の魔物の所でゴゾゴゾと何かをしている様子だ。
「とりあえず大きさ・戦闘痕・魔力の残滓……あくまで状況から見た判断しか出来ないけど。
この未確認の魔物は少なく見積もってA級の危険度ね、貴方と私でも相当手こずる相手のはずよ。
そこの駆け出し補助魔術師クンが一人で勝てるとは思えない」
「やっぱりそうか」
やっぱりって……薄々分かってたって事?
「でも実際僕は――」
「待て待て、君の話を信じないわけじゃない。
現に君は基本的な仲間の手当も出来ないくらいだし、個人の情報を簡単に話してしまうくらい警戒心も持ち合わせてないからな。
君の話を信じるからこそ聞きたい、どうやってあの魔物に勝った?
本当は別の人物がこの洞窟のどこかに居て、そいつに脅され匿っているとかではないのか?」
そんな事はないんだけど、この人の目は真剣そのもの――何かこの件とは別に事件があったのだろうか?
でも、疑われてるからこそ本当の事を言わないと……変に誤魔化したら困った様子を見せたら余計疑われちゃうし。
「そんな事はありません、あの魔物は僕一人で倒しました。」
「そうか……。
ならそれを証明してもらわないとな、その腰に差してる短剣を抜くといい」
「え?」
僕はまさかの言葉に驚くと、難事解決班の人が剣を抜いて構えている。
もう一人の人も止める様子はない、ここで試合をしろってこと!?
「俺は
君の力、見せてもらうぞ」
「クレイグ……です。
全力で行かせてもらいます!」
信じてもらうにはこれしかないみたいだし……やるしかない!
僕は短剣を構えて今さっき覚えた補助魔術をありったけ掛けて短剣を構える、
何か分からないのを使う訳にはいかないからね、他のは名前からして分かったから。
よし、いくぞぉぉ!
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