第3話 初めての任務、襲い掛かる危機
僕とサラは食事を終えて、
僕のレベル上げも兼ねているからどんどん前線に出ないとね、短剣の扱いは人より上手いつもりだし。
食事の時に聞いたけど、サラが天啓で受けた道導は恢復術師だそうだ。
回復ではなく恢復らしい、枢機卿曰く血縁は通常通りだけど聞かない適正なのでサラにも
そういえば
その人独自の固有能力が開花する可能性もあるし、扱える技術や魔術も上位の物になるんだって、もし本当に僕が
補助魔術の上位って想像出来ないな、結局は自分や他の人の手助けなんだろうけど。
考え事をしながらスライムを短剣で軽く倒しつつ森を目指していると、サラがじーっと僕の事を見て話しかけてきた。
「クレイグはどうして短剣を使ってるの?」
「サラも幼いころは一緒な学校だったから知ってるでしょ、僕は剣の扱いが苦手なんだよ。
でも体を動かすのは苦手じゃないから、一人で戦うために武器が欲しかっただけ……それがたまたま短剣だったってだけさ」
「ふーん……剣の適性が無いとあそこまで顕著に扱えなくなるんだね。
お父様の研究はすごいなぁ」
サラは僕の答えに納得したのか、一人で何かをブツブツと言いながら僕の後ろを歩きだした。
独り言は集中力を増すとは言うけれど、ちょっと怖いのでやめてほしい。
あれからしばらく歩いて森の洞窟へ到着、初心者用任務の野草集めとスライム討伐はここに来るまでに完了。
その甲斐あって僕の道導等級は三画まで増えて、補助魔術
基本的な補助魔術って感じで安心したような拍子抜けしたような……とりあえず効果が明確に分かるもので一安心はしている。
問題はどれくらい速度が上がるかってところだ、身体速度が上がるのか反応速度が上がるのか……その両方か。
サラから軽く補助魔術について教えてはもらっているけど、同じ名前でも効果は個人によって様々らしい。
本当に扱いづらいね補助魔術って!
「さて、森の洞窟に着いたけど……依頼書には最奥まで行って状態を記録って書いてるわ。
まずは最奥を目指すわよ、クレイグの
「そうだね、僕が怪我したら治療は任せたよ」
「怪我なんてさせないから安心して!」
恢復術師なのに怪我をさせないって、国からパラディンの称号を得た人じゃないんだから。
怪我をしたら治してほしい、むしろそれが正解だと思う。
そんな事を思いながら森の洞窟へ足を踏み入れる、まさかこんなに早く洞窟へ足を踏み入れるなんて思いもしなかったな。
もし天然洞窟じゃなくてダンジョンだったらどうしよう、とは思ったがそんな危険な任務は
これは少し背伸びしている程度の任務、頑張ればこなせるはずだ。
そう思って奥へ奥へと進んでいくと、外で見るのとは色が違うゴブリンの群れが進路を塞いでいるのが遠目で見えた。
向こうはこちらに気付いていない様子……さてどうしようか。
「ここは私に任せて、何とか一掃出来ると思うから。
でも万が一の為に
「それはいいけど、サラは恢復術師なのに戦えるの?」
「大丈夫、見てたら分かるから」
多くの治癒術師が戦えないように、サラも例外では無いと思ったけどそうじゃないらしい。
僕はサラに
その状況に備えて自分にも使っておく、これで準備は万全かな?
詠唱もすぐに終わりサラと僕に補助がかかったのが感覚で分かった、これでどの程度速度が上がるのか分かるはず。
僕の補助を受けたのが分かったサラは、遠くに居るゴブリンの群れに向かって歩いていった。
嘘でしょ、恢復術師には攻撃する手段なんて殆ど無いはずなのに――と思った次の瞬間、サラの掲げた掌にすごい勢いで魔力が集まっていく。
凄い凄い、
もしかしたら僕も近いうちに……なんて淡い期待を抱いてしまう、それくらいサラが集めている魔力は強大。
「ZySz0+3?%k……<魔氷>!」
その強大な魔力は大量の氷の飛礫になりゴブリンの群れに襲い掛かる――とてもさっき冒険者になったとは思えない威力で。
これだけの実力があるならCランク云々を心配しないのも納得、すぐに信用を獲得して上のランクに上がれるだろうなぁ。
でも、僕にそんな実力は無いから帝国外に出れるのはサラだけになるんだよね、そのあたりはどうするんだろうか?
「ふぅっ……こんなもんよ!」
「すごい、流石最高学府を飛び級で卒業する実力があるね!」
ゴブリンを倒して戻って来たサラは、少しふらつきながらこちらまで歩いてきて、そのまま座り込んでしまった。
「もちろんじゃない――って言えたらかっこいいんだけどね、今は魔力量が足りなくてこうやって疲れちゃうのが難点かな。
それよりクレイグ、とんでもない補助魔術をかけたよね……魔力の収束速度から詠唱まで、何か全ての動きが早くなったんだけど?
それにクレイグの詠唱がほどんどなかったような……」
「三画しかない附与魔術師の
そんなすごい補助魔術なら魔力消費量もすごそうだけど、僕の魔力なんて殆ど減ってないのを感じるし」
実際に
それを聞いたサラは「嘘でしょ……絶対さっきは……」ってブツブツ言いながら考え事をしだした、実際効果を実感したサラを疑うのは申し訳ないけどそんなすごい効果があるなんて考えれない。
その後はまばらに現れるゴブリンや魔物を討伐しながら最奥へ、ここまでの簡易的な洞窟の地図・生息していた魔物の種類なんかを羊皮紙に記録して帰ろうとしたが、サラが隠し通路を発見。
「ここも調べておきましょ、もしかしたら追加報酬があるかもしれないし」
「そうだね、でも気を付けて進もう」
ここまで敵もそこまで強くなくて任務を難なくこなせて良かったよ、僕の筆画も五画まで進んだし!
それに伴って新しく覚えたのは
お気楽に考えて隠し通路の先に広がった空間を二手に分かれて調べていると、サラの叫び声が洞窟に響き渡った。
「きゃあぁぁぁぁっ!」
「サラ、どうしたの!?」
サラの叫び声に反応して振り向くと、全身から触手を生やした見たこともない奇妙な生物がサラの近くで蠢いていた。
一体どこからこんな魔物が……!?
サラは生きてるみたいだけど、吹き飛ばされたのか岩壁に体をぶつけて気絶している……奇妙な生物はサラに向かってじりじりと近づいていた。
やばいやばいやばい!
助けなきゃという一心で自分に
「フシュルルルルゥ!」
おぞましい奇声をどこからか発する奇妙な生物は、ターゲットを僕に変更し触手を何本も突き出して臨戦態勢を取ってきた――それだけで威圧感が凄い。
でも僕が扱えるのはナイフと2つの補助魔術だけだ……これを駆使して何とか切り抜けないと!
サラも守らないといけないし、責任重大だぞ……!
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