断章

─動輪─

 この脚がはやく駆けれたなら、


 この腕が長ければ、


 この拳がかたければ、


 その牙を砕けたなら、


 たすけ出せたのだろうか。



 わかっている。


 の身には、いずれもそなわっていない。



 ただ一つりの、〝つよき命〟が在るだけだ。



 だから、行しあの瞬間を何度繰り返そうとも。とざされたあぎとから、おまえを救け出す事はかなわないのだ。



 わかっている。


 わかっていたから、此の身に〝つよき血のわざ〟はあらわれたのだ。


 他の誰もを差し置いて、セカイはいらえた。



 零にしたおれに、機を逸していようとも諦める道は無い、再起せよと突きつける。


 死と云う不可逆な〝おわり〟を前にしても、膝を折る無様を赦されない。



 なれば、肉の身軀からだてよう。


 境界を割ろう。


 必要とあらば、世界を渡ろう。


 おまえの魂が漂白されたというのなら、必ずや捜し出し、だそう。



 忘るるなかれ。



 我こそはおうじゃ



 血に。涙に。よろこびに。



 ふるえる者。



.

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